月旅行に挑むZOZO前澤氏、海外からの評価は「イマイチ」な理由世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2018年09月27日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

「アーティストと共に」に対して批判も

 前澤氏に批判的なコメントもある。宇宙専門サイトのスペース・ドットコムは、さらに突っ込んで、「アーティストを連れて行く」という前澤氏のアイデアにかみ付いている。というのも、宇宙開発の分野では、科学とは遠い存在のアート系を排除する伝統のようなものが存在するからだという。「宇宙開発にアーティストは必要ない」ということのようだ。貴重な宇宙開発のためには科学者を送るべきで、前澤氏のアイデアはお門違いだということらしい。

 またアート市場の専門サイトであるアートネットは、前澤氏の「ピカソが月に行ったら〜」という発言に対して、ピカソは月面着陸が行われた1969年に宇宙について聞かれた際に「私には何の意味もない。意見もなければ、どうでもいい」と答えていたと書いて皮肉っている。

 他の記事を見ていても、スタートトゥデイまたはゾゾタウンという名称がそれほど認知された感じはしない。というのも、ゾゾ自体は特段興味を持って扱われていないからだ。おそらく海外の記者にとっては、マスク氏のような「革新的」な技術などで世界を変えようとしているカリスマ的な人物を前にすると、ネット通販サイトはササらないということかもしれない。

 ただひょっとしたら、前澤氏はまったくPRなど考えていないのかもしれない。純粋な子どものように宇宙やアートの世界で夢を追い求め、何の意図もなく、日本で稼いだ莫大な金を使い、海外に落としているだけのことなのかもしれない。もっとも、何も考えていなかったら、それは逆に怖い気もするのだが……。

 ただ18年に入ってからはアートを購入しておらず、その代わりに宇宙ビジネスに金を使っていると考えられる。そのあたりはきちんと計算しているようである。

 前澤氏にインタビューした米通信社ブルームバーグの記事によれば、彼はゾゾが世界的なショップになることを目指しているという。ならば、少なくとも投資額に見合うようなPRをするべく検討する必要があるかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.