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「コミュ障」だった38歳平社員エンジニアが会社から資金調達できた理由「会社がつまらない」と嘆く前に(3/5 ページ)

» 2018年10月02日 08時30分 公開
[今野大一ITmedia]

いかにして会社を「動かす」のか 500万円調達の流儀

 自らを「コミュ障だった」と自虐的に呼ぶ角岡は、もともと会社と交渉するなどという大それたことができるキャラクターではなかった。社内ハッカソンのアイデアを当初提案しようとした時も「上司や同僚は業務で忙しそうで、非常に相談しづらかった」といい、一歩踏み出すにはそれなりの時間が必要だったという。

 「どうすれば、仲間を作って新しいことをやれるのかと悩みました。上司たちに相談したうえで自身の業務に加えて3年ほど前から新規ビジネスの創出にも取り組んでみました。しかし、『部署の業務外での予算執行』『実証実験の責任所在』『門外漢である幹部社員からの干渉』など、本来の新規事業とは無関係の部分でのコストが膨大で、通常業務と兼務することに物理的にも時間的にも限界を感じていたのです。そこで『部署外活動を公式の立場にする仕組み』と『ビジネスを支援するための予算』が欲しいと、会社の上層部に直談判することにしました」

 角岡は自らの実績であるハッカソン活動に対する社内表彰の受賞パーティで、グループ十数万人を束ねる社長に直訴。社長の前で1時間プレゼンをする時間をもらうことに成功する。1カ月間かけて、ハッカソン活動でできた仲間たちと、60枚にわたる社長プレゼン用資料を用意した。

 しかし、社長からの答えは「大事な話だから、これからもしっかり議論してほしい」というもの。最初は素っ気ない答えだと落胆していたものの、よく考えてみると、社内での議論はいくらでもしていいということだ。その後、実際に人事部、法務部などの各部署を回って担当者から担当役員まで、多くの議論を重ねた。そして、社内だけではなく、社外でも議論を重ねる必要があると感じ、大企業の若手有志団体や、経済産業省や厚生労働省などの役所にもアポを取り、足を運んだ。

 すると、支援の手は意外なところからやってくる。角岡の活動を見ていた自社の役員から「『今期、君が使う予算を計上しておいたよ』と声がかかった。そうして角岡は実際に動き続けることで、通常業務外の活動費用として500万円を獲得する。

 これまでのケースでは、社内で始めた活動が、結果的に社外にも広がっていったが、角岡は「その大前提として大事なのが社内での土台づくりだった」と振り返る。角岡は、上層部に掛け合う以外に以下3つを実践することが重要だと教えてくれた。

phot 社長プレゼンに使った資料。これまでの支援の例
phot 社長プレゼンで使ったスライドのうちの1枚。実際のアイデアから商談化までの流れ

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