米国でAI技術者の争奪戦、超売り手市場で賃金上昇トップは時給1000ドル(1/3 ページ)

» 2018年10月24日 15時58分 公開
[ロイター]
photo 米カリフォルニア大学バークレー校で9月に開かれた電気工学とコンピューター科学分野の学生向け就職フェア会場(2018年 ロイター/Ann Saphir)

[サンフランシスコ 15日 ロイター] - 次世代の技術系社員の採用を目指す企業数十社が9月、米カリフォルニア大学バークレー校で開かれた電気工学とコンピューター科学分野の学生向け就職フェアに集まった。

ボリス・ユエさん(20)は、参加した数千人の学生の1人で、学生の間を縫って歩いてはリクルーターと会話していた。

だがユエさんは、就職競争をそれほど心配していない。コンピューター技術を持つ学生の採用見通しは全般的に明るいが、ユエさんはその中でも希少性の高い分野を専門にしている。人間の思考に似たやり方で学習し、思考することを機械に教えこむ人工知能(AI)の分野を専攻しているのだ。

ユエさんが、職探しに困ることはほぼないだろう。「機械学習の分野で、求人が足りないということはない」と、彼は言った。

そして、彼は正しい。

AIは今や、さまざまな分野の製品に導入されている。自動運転車や、雑草を見分けて除去するロボット、危険な皮膚がんと無害なほくろを区別できるコンピューター、そして、スマートロックやサーモスタット、スピーカーなどによって、この技術は家庭にも持ち込まれつつある。ジョージア技術大では、学生がAIのデジタル教師とやり取りしながら、機械学習についてのオンライン講座を受講している。

AIの導入拡大に伴い、高いスキルを持ったこの分野の技術者が不足する事態が起きている。学生の需要に応え、全米の学校がAIの授業やコースを追加したり学生数を増やしたりしているが、この分野で経験や訓練を積んだ学生が就職市場では圧倒的に不足している。

そしてそれは、大きな結果を伴うことになる。

AI技術を持つ求職者が絶対的に足りないため、採用が遅れ、一部企業では成長が阻害されていると、リクルーターや雇用主側は指摘している。また、生産性を向上させ、米経済の成長を加速させる可能性があるとされるこの分野の技術導入が遅れる可能性もある。米経済の成長率は現在、金融危機前の半分程度にとどまっている。

カリフォルニア大バークレー校の就職フェアでインターンや新卒者の採用活動をしていた、半導体メーカーのマーベル・テクノロジー・グループのアンドリュー・シン氏は、AI関連のポストで採用に苦戦していると話す。

「ここ何年か、十分に採用できていない。そのことで、実際にいろいろなことで遅れが生じている」と、マーベルでチップのデザインマネジャーを務めるシン氏は言う。

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