また、こんな「裏付け」もある。頭の良さを評価することで知られているIQのスコアには、先天的な才能は関係ないらしい。今回の研究を行った研究者の一人、ジョンズ・ホプキンス大学の経済学者であるニコラス・パパジョージ氏は、「2人の子供を比べた場合、裕福で習い事などをしてきたほうがIQスコアは驚くほど高くなるが、遺伝情報で比べると彼らの遺伝子的な才能のレベルはほとんど同じである」と、取材に対して語っている。
つまり、多くの人が抱くような「IQスコアの高い人がいわゆる生まれながらの天才である」というイメージは正しくない。だが習い事の有無など育ってきた環境でIQスコアは高くなるとみられるという。
いまさらこんな話をすると、怒る人もいるかもしれない。「子供を成功させたいなら、子供の頃からいろいろ学ばせるなど、教育を熱心にしたほうがいい」という話なら、ここで言われなくても、あまたある教育論などですでに聞いたことがあるような話だからだ。あらためて大げさに研究する価値すらないのではないか、と。ただ今回、その“定説”が、初めて研究者による大量の遺伝子データを基にした研究で数値化されて明らかになった。その意味で、この研究は価値があり、注目されている。
しかも実は、この話はここで片付けてしまってはいけない深い議論につながっている。
まずこの研究が示唆しているのは、子供を育てる際に、遺伝子や才能なんていうのは忘れていいということ。繰り返しになるが、できる限り環境を整えてあげて、学びなどの機会を与えてあげれば、将来的にそれなりの成功につながる教育(学歴)を手にすることができるということだ。
ただその一方で、この結果はある別の(不都合な)側面についても浮き彫りにしている。
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