今回突き止めたバカマツタケの具体的な成育条件は「企業秘密」(秋津さん)だが、4月には3カ月の培養期間を経て長さ9センチ、重さ36グラムのバカマツタケを収穫した。その後も育成に成功、秋津さんもその1本を味わってみた。「素材(の味)を重視して焼いて食べたが、香りの強い天然物と同じ味わい」(秋津さん)。
今後、多木化学は自社生産に向けて準備を進め3年後の商品化を目指す方針だ。季節と関係なく生産できるため価格は天然のマツタケより安価になるとみられ、品質も安定し虫の混入も防げるという。
今回の栽培成功は他のキノコの専門家からも評価の声が上がる。一般財団法人・日本きのこセンターの菌蕈研究所(鳥取市)の長谷部公三郎所長は「生きた植物無しでの菌根菌の栽培はこれまで難しいとされてきており意義がある。木から供給されている栄養を(特定して)与えることができたのではないか」と話す。「消費者にさえ受け入られれば、マツタケが欲しいなと思ったときに比較的簡単に入手できるようになるだろう」。
秋津さんは当面、バカマツタケ生産の研究に専念するが「(この技術を)適用してマツタケの人工栽培の研究にも挑んでみたい」と意気込む。
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