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朝ドラ『半分、青い。』の主人公には、5つの習慣があった偶然を計画的に設計(3/4 ページ)

» 2018年10月26日 10時32分 公開
[内藤由貴子INSIGHT NOW!]
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計画的な偶発性を招く要素

 さて、その偶然を計画的に設計なんてできるのか、ということですが、クランボルツの理論では、次の5つの習慣によって可能にすると言います。

(1)好奇心(2)持続性(3)柔軟性(4)楽観性(5)冒険心

 これらを意識して動くことが、偶然の用でも何らかの道を作ることになるということでしょうか。実際、鈴愛には、この5つが、十分にありました。

 (2)の持続性についても、マンガ家をあきらめませんでした。挫折してやめたことを考えると矛盾するようですが、自分の才能の限界までとことんやったからこそ、手放せたのでしょう。中途半端でやめなかったからこそ、引きずらず、次にシフトできました。あの時、ああしておけばよかったとか、そんな後悔も入る余地がなくなるまでです。それだけ、本人としては納得がいっての引退、そこまでとことん持続したからです。

 離婚した涼次もそう。映画監督になる夢をとことんやらないまま生きることはできなかったから、家族を捨てても取り組んだ。結果として、監督になりました。

 律もまた然りです。彼のロボットの夢は、会社員時代にスタンフォード大学で研究もしたのに、帰国後、不景気でロボットの開発部署が閉鎖。エンジニアの仕事ができなくなった時、ロボットに限らず、自分が人を幸せにする「もの作り」が原点にあったことに気づき、大手を辞めて起業します。

 マンガの巨匠、秋風にしても、かつては百科事典のセールスマン。その切れ者マネージャーの菱本若菜も、大手出版社から不倫が原因で退社、秋風に拾ってもらった過去があります。

 鈴愛には一貫性がないようですが、持続性以外の4つも人一倍あったため、人と出会い、巻き込みながら助けられて人生がいつの間にか進んでいく。計画的な偶発性というと、何やら意図的なものを感じますが、たぶんとてもシンプルなことでしょう。

 つまり、出会った人から新しい世界や価値を知り、興味をもって自分なりに咀嚼(そしゃく)して方向を見出し、さらに頑張ってみる、人に自分の夢の思いをどんどん伝える、なんとかなると自分の気持ちを裏切らない ということ。

 次々に、新しい夢に変わっていくのも、今までの朝ドラにはないパターンだと思いますが、一つの夢を追うことだけが良い人生だとは限らないと教えてくれました。そして、一つの夢を追い続ける人よりもまた、違うものに出会って新たな夢を実現するパターンの人の方が多いのではないでしょうか。

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