「諦めなければ夢はかなう」 豊ノ島との友情が生んだ相撲雑誌相撲女子を首ったけに(3/3 ページ)

» 2018年11月05日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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相撲トリビアの詰まった「入門誌」貫く

 広告はなかなか増えなかったが、竹内さんの相撲ライターとしての力量や専門知識がメディアからだんだんと注目されるように。相撲の記事執筆や編集、外部のイベントのプロデュースの仕事が舞い込んできた。毎回女性客が殺到するTSUNAのトークイベントでも収益が出るようになった。

 現在はコストダウンのため主にサイト上での無料ダウンロードという形を取る。紙の雑誌は有料の年間購読に加えてイベントで配布もしている。竹内さんによると年間購読者の8割が女性。特に20〜40代に集中しているという。

 TSUNAのスタンスについて竹内さんは「うちは入門誌。専門誌になるつもりはない」と断言する。多くの相撲部屋に出入りして力士や親方と親しく付きあい取材する中で、「現役力士が親方の名跡を継ぐ」といった特ダネを知ることもある。しかし「それは僕たちが書かなくていい情報」なのだという。

 逆に竹内さんがこだわるのが、「ある力士はラーメンの替え玉を24皿も食べた」といった相撲部屋や力士のユニークな“トリビア”だ。「力士はイノシシを殴り殺せるのか、ゾウには脳震とうを起こせるのか。あるいはゲン担ぎで10日間頭を洗わなかったら本気で臭かったとか。そんな話を今の時代に合った表現で紹介する入門誌でありたい」(竹内さん)。

 ちなみに最も読者から反響の大きかった記事は、本場所の土俵を作る過程を追った特集だという。ただ、竹内さんの個人的お気に入りの話は「相撲部屋の怪談話」。巡業先で力士はお寺に宿泊することが多く、「見える力士には幽霊が見えるそう」(竹内さん)だとか。

 昨今も元貴乃花親方の去就など、定期的にスキャンダルやゴシップが発生する相撲界。ただ、竹内さんは「本当の相撲ファンはこういったネガティブなニュースを冷ややかな目で見ていると思う。自分の好きな力士の番付には影響のない話。実際に国技館に足を運ぶファンにとっては『土俵の上の世界とは関係ないこと』だと思う」。

 一方、こうしたゴシップを書き立てる他メディアの姿勢には少し疑問も感じているという。「相撲や力士について強く何かを断言している記事ほど、知識のない人が書いているなと感じることがある。(書き立てる前に)朝稽古くらい実際に見てほしいと思う」。

 「相撲は知識欲をすごく刺激されるもの。中の人に会わないと分からないことが多い。例えば『呼び出し』がなぜ扇子を持っているかというと、神聖な土俵に唾が飛ばないため。意味のないことなんてないのです」(竹内さん)。豊ノ島との友情から生まれ、竹内さんの相撲への好奇心が育んだTSUNAは今も多くの若い女性を相撲の世界に呼び込んでいる。

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