“あの事件”の舞台・新潟県十日町市で味わう自然 「サンクス・ツーリズム」のススメ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)

» 2018年11月16日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

十日町市の見どころ「美人林」「星峠の棚田」

 レンタカー店が開店する午前8時ちょうどにクルマを借り、最初に向かった場所は「美人林」だ。丘陵の一角に樹齢約90年というブナの林が広がる。その真っすぐな木々の美しい立ち姿から「美人林」の名が付いた。レンタカーで約30分。信号機が少ない快適なドライブだ。前日のほくほく線からの車窓も見事だったけれど、道路沿いの紅葉も素晴らしい。山肌の色の豊富なこと。ときおり、見事な黄色のイチョウがある。まるでそこだけにスポットライトが当たっているようだ。

 こんなに早くから観光客などいないだろうと思っていたら、無料駐車場は9割も埋まっている。美人林に立ち入り、背の高いブナの林に囲まれる。細い幹が、緑、黄、赤の葉で彩られている。見上げれば万華鏡のようだ。色とりどりの葉たちの奥に青空。ここは京都ではないけれど、脳内でBGM『私のお気に入り』が再生される。そうだ。十日町、行こう。

photo 美人林。写真では分かりにくいが、この風景に360度囲まれると想像してほしい。想像できない人も想像できた人も行ってみた方がいい

 写真家が多い。話を聞くと、早朝の風景、人の少ない景色を撮りたくて、夜明けから写真家が集まるそうだ。ここで夜を明かす人もいるという。水彩や油絵を描く人もいる。大きなワンコがあいさつしてくれる。人は多いけれど、ブナ林の雄大さの中では人は小さい。そして静かだ。野鳥の声、木の葉を踏む音しか聞こえない。

photo 池に鯉がいた。絵になる構図が多く、写真家や画家が夢中になる気持ちも分かる

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