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続・自動車メーカーの下請けいじめ池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2018年12月03日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 10月29日の記事で、筆者は自動車メーカーの下請けいじめ問題についての記事を書いた。

 予想していたとはいえ、手厳しい批判コメントが多数寄せられた。要するに、筆者がメーカーに忖度(そんたく)していると言いたいらしい。メーカーの犬というハッシュタグまでいただいた。

 こういう商売なので、筆者個人は何と言われようと構わないが、いい加減、「大企業は悪」「中小企業は正義」みたいなアホくさい決めつけを止めないと、この国の経済は良くならない。

自動車メーカーは多くのサプライヤーで支えられている。サプライヤーなくしてメーカーは成り立たない 自動車メーカーは多くのサプライヤーで支えられている。サプライヤーなくしてメーカーは成り立たない

 個人的には今日本で一番の問題なのはメディアの劣化だと思っている。誰がベビーフェイスで、誰がヒールか最初に決めて取材する。基準にするのは世間の風評だ。あるいは、お茶の間のカタルシスと言っても良い。誰を悪者に仕立てると一番大向こう受けするかばかり考えて、真実なんてどうでも良いと考えているように見える。これには本当に怒りを感じる。

 辛辣に言えば、筆力がないから世評をなぞるストーリーしか書けないのではないかと思う。浅学非才な筆者でも「ラクして伝える」ために見たもの聞いたものを曲げるわけにはいかないからこそ拙い長文を連ねるのである。

 恐ろしいことに、取材時に見立てが間違っていることが分かっても、それは見なかったことにして予定の筋書きで報道する。特に不祥事の記者会見でそういう場面を頻繁に見掛ける。

 質疑応答でわざわざ手を挙げて質問し、何とか筋書きに合う言質を取ろうとする。回答する側はそのあたりを十分承知しているので、やんわりと否定。事実を説明する。場合によると言葉を変えて、同じ質問をいくつもの大手メディアがしつこく繰り返えす。失言を待っているのだろう。

 側から見ていて、企業側がそれら執拗な攻撃をかわし切って誠実に対応しても、翌日の記事を見ると、回答で否定されたはずの見立てがそのまま書かれており「あれなら何も記者会見に来なくても書けるじゃないか」と思う。

 特にひどいのは、弱者を利用して感情論に仕立てるやり方だ。大メーカーと零細下請け。その構図でどっちがベビーフェイスでどっちがヒールになると話が分かりやすいかは言うまでもない。そういう世間の空気に忖度して記事が書かれ、その記事を読んだ人たちは、それに簡単に同情して大メーカーは悪だと騒ぎ立てる。マッチポンプというか鶏の卵と言うか。問題は、そこで一生懸命世界と戦おうとしながら身勝手なメディアにヒールに仕立てられる人たちのことを誰も考えていないことにある。

 「弱者がかわいそうだから」という理由で、原価低減も行わず、新技術の開発もせずに現状を維持していたら、それでこの国が幸せになれるのかをちゃんと考えてみた方が良い。

 現状維持にこだわっている間に世界は熾烈な競争をしている。弱者のペースに合わせて待ってはくれない。

 それを感情論だけで読み解こうとするニュースが後を絶たない。試みにネットで検索してみると、以下のような事例があった。著作権があるから丸ごと引用はできない。論点を筆者が書き直してみる。

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