9月20日。一般社団法人日本自動車工業会の定例記者会見が開かれた。トヨタ自動車の豊田章男社長が自工会会長に就任した今年5月以来、一貫して最重要課題に位置付けているのが自動車関連税の問題だ。
5月に報道各社の合同インタビューを受けた際(関連記事:豊田章男自工会新会長吠える!)も、報道に対して「日本の自動車関係税は世界でとんでもなく高いんです。ちょっと多いとか、そういうことを言っているんじゃないんです。例えばフランスは保有税はゼロです。米国との比較では31倍。そういう事実を皆さん報道してください」と強く訴えていたが、今回はそれを一歩進めて、より規模の大きい自工会の定例記者会見の場で、筆頭テーマとして再びモノ申す形となった。
まずは問題の本質的部分を絞り込もう。
・世界的に見て税率そのものが異常に高い
・課税根拠が矛盾している
・代替財源を自動車ユーザーに求める矛盾
自動車関連税制の問題点は、大きく言えばこの3つであり、異常な税制が自動車産業という特定の産業に対して明らかに負の影響を与えている。
日本の四輪車新車販売は780万台(1995年)から490万台(2016年)へと大幅に縮小した。17年には523万台と回復を見せたが、基調的に上向くとは考えにくい。過大な課税がこの状況を加速させているのは事実だろう。しかしながら、自動車の販売減に関して言えば、税だけの問題ではなく、日本の人件費が異常に収縮してしまったことが問題の本質だ。この低賃金化の話をしないで販売減の話をしてもフェアな話にならない。なので税制の話の前に低賃金化について考察したい。
厚生労働省の調査によれば、17年の新卒平均年収は大卒男性で207.8万円。大卒女性だと204.1万円。月割りにすればそれぞれ17万3166円と17万83円。恐ろしい現実である。
この原因を大企業の内部留保に求める人がいるが、それは結果に過ぎず、どうしてそうなるかのメカニズムの方が重要である。
日本では、正社員を雇用したら、新卒から定年までの38年間、辞めてもらうことも、基本給を下げることもできない。スタメンを決めたら試合が終わるまで選手交代禁止でゲームを戦っている。他国は状況に応じて自由に選手を入れ替えてゲームが進む中、チームジャパンはやり直しや試行錯誤や状況に応じた変更ができない。
これは経営者に「38年間必勝の作戦をチーム編成前に立てよ」と言っているに等しい。そんな作戦があるなら苦労はない。正社員の待遇を定年まで保証できる魔法があるとしたら、それは企業がため込む資産を増やし、併せて支払い給与総額を抑えることになる。無理を企業だけに全部押し付ける法律がむしろ内部留保と低賃金を加速させているのだ。
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