もう1点、労働組合の問題がある。労働組合は正社員を守る組織である。全労働者の味方ではない。だから全労働者の中で非正規雇用の比率が4割に達する現在、労使関係が大昔のように「個人対企業」に逆戻りしている。
バブル崩壊以来、社会が激変していく中で、こうした労働の構造問題に手をこまねいて来た歴代政府の政策が問題の本質である。労働市場の健全な流動化や非正規雇用者が加入できる労働組合の仕組み作りなど打てる手は無数にあったはずだ。そうなっていれば非正規雇用はこんなに増えていないし、自主的に非正規を選ぶ人の権利も守られたはずだ。
会社を辞めてもまたすぐ次の仕事が見つかる。評価されない職場を辞めて新しい職場で成果を上げれば給与も上がる。未来さえ明るくなれば人はもっと消費をする。そういうビジョンが作れなかった。
さて、こうして国民の給与がどんどん下がっていけば、消費が落ち込むのは当然だ。自動車に関してはそこへさらに不公平税制が追い打ちをかけている。自動車関連税は合計9種類もあり、税負担額の合計は8.4兆円。国の租税収入の約1割にも達する。金づるとしてみればそれは手放せない。しかし、日本経済全体に対する影響を見た場合どうだろうか? 以下の資料を見てみよう。
自動車産業が日本経済の大黒柱になっていることがよく分かる。それを金づるとだけみなして歪んだ課税を続けることで産業の成長を阻害する制度は、イソップ童話の金の卵を産むニワトリを殺してしまう愚かな男の話を思い出さずにはいられない。
さて視点を一度ユーザーに切り替えよう。そもそも課税されているのは自動車メーカーではなく、ユーザーである。馬鹿馬鹿しい課税が嫌ならどうするか? 自動車関連税の負担額は、現在総務省が問題視して値下げ議論が巻き起こっている携帯料金の約2倍である。
ユーザーの中でも「だったらクルマは持たない」ことが選択できる都市部の住人はまだ良いが、クルマがないと生活が成り立たない地方在住の人々はこういう制度にやられるがままだ。そもそも免許とクルマがないと通勤できない人たちにとっては、まさに生きていくための必要経費がめちゃくちゃに課税されているのだ。
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