筆者は自動車メーカーの経営や売り上げに関する記事を書くことが多い。基本的にビジネスニュースや経済ニュースを専門とする媒体がホームグラウンドなので当然そうなる。
そもそも、自動車メーカーが新技術を投入したり、性能向上を目指すのは、グローバルな規制や経営課題を解決したり、競争に勝つためであって、理由もなくただやりたかったからやってみたということはあり得ない。
株式を公開している以上、株主に対して、継続的に利益を上げ、配当を支払う義務がある。研究開発費でも、人件費でも、材料費でも、支払いの使途に合理的な説明がつかない支出を行い、その結果として本来得られるべき配当を減らしたら、経営陣は株主代表訴訟で訴えられるリスクがある。企業も株主もボランティアではない。自動車は多分に趣味的側面を持つので、その大原則が忘れられがちだ。
自動車を趣味の側面から捉える専門誌であれば、走る・曲がる・止まるが優れていることが目的でも良いだろうが、経営側面から考えた場合、それが意味するのは利益の最大化を目的とした顧客満足度の向上であり、目的達成のための手段である。
だから筆者は、走る・曲がる・止まるがとても大事だと考えているが、それは競争領域における製品の優秀性を見るためのものであって、それのみを単独で評価しようとは思わない。
配当の最大化に取り組んでいることを客観的に示す指標はいくつもあるが、最も端的に現れるのが年間配当金と配当性向だろう。
配当金は文字通り1株あたりに還元される期ごとの株主利益であり、配当性向とは期ごとの純利益に占める株主の配当金比率のことで、まあ平たく言えば株主の分け前だ。株式マーケットが投資である以上、配当金は投資の目的そのものであり、配当性向は株主への優遇度合いを示すものだ。
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