各社が鶏肉に注力するのには理由がある。デフレからなかなか抜け出せないなかで、お客の懐事情は厳しさを増す一方だ。かつてのようにぜいたくはできないので、なるべく安く肉を食べたいと考える。鶏肉は原価が安く、焼き鳥やから揚げといったような人気メニューも多いので、低単価でボリュームのある料理を提供できる。さらに、味を濃くすれば国産であっても外国産であっても、味の違いが気にならないお客も多い。まさに、鶏肉はデフレ時代にこそ受け入れられる食材なのだ。
真門部長は「チェーン店と個人店のよさのバランスをとっていきたい」と語る。店舗数を増やすことでスケールメリットが発生し、食材の調達費を下げられるのはチェーン店のメリットだ。一方、串打ちというのは非効率な作業との指摘もあるが、「個人店のような良さ」をお客にアピールできる。真門部長は「お客さまに鮮度の良さを伝えきれていないという課題がある。ブランドイメージをどのように伝えていくかが弊社の今後の課題だ」とコメントした。
確かに、鳥貴族の公式Webサイトをみると、「創業以来貫いてきた均一価格」「フードメニュー全品国産達成」といった点は大きくアピールしているが、串打ちについてはあまり触れられていない。認知度の向上はこれからという段階だ。
鳥貴族は現在、深刻な客数減に苦しんでいる。2018年7月期決算説明会の資料によると、直近の既存店における客数は前年割れの状況が続いている。近年、店舗数を急激に増やしている居酒屋業態は、ある特定の商品に強みを持っている。例えば、串カツ田中は串カツを売りにしているし、「肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場」はギョーザを売りにしている。「均一価格」と「焼き鳥」を売りにしている鳥貴族にとって、焼き鳥の魅力が十分に伝わらない事態はどうしても避けなければいけない。
鳥貴族は「店内で串打ちをした焼きたての焼き鳥はおいしい」というメッセージを効果的に伝え、お客を再び呼び戻すことができるだろうか。
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