創業者が打ち出したカルピスの4つの価値は「おいしいこと」「滋養になること」「安心感のあること」「経済的であること」。低迷から抜け出すためには、そこに立ち返り、根本的な価値をあらためて伝える必要がある。
そこでキーワードとなったのが「健康」だ。「乳酸菌」「発酵」という言葉は“食と健康”への関心の高まりとともに注目されているはずなのに、カルピスに対してそのイメージを持つ人は多くなかった。あらためて訴求すれば刺さるはず。そう考えた。
その取り組みの一環として継続的に実施したのが、商品パッケージの工夫だ。09年からパッケージに以下のようなキャッチコピーを入れて、15年と18年に文言を変更している。
3つのコピーを比べてみると、少しずつ要素が加わっていることが分かる。最初は「乳酸菌」、次に「酵母」、そして「発酵」という言葉が使われるようになっている。田中氏は「カルピスは乳酸菌発酵、酵母発酵と2回の発酵工程があり、非常にユニークな製造方法です。その要素を織り込んでいきました」と説明する。
また、カルピスの製造方法や健康に関する勉強会やセミナー、量販店の催事を開催するなど、地道な取り組みも重ねていった。
そして、健康に関する取り組みが大きく花開いたのが17年。機能性表示食品「カラダカルピス」の発売だ。なじみのあるカルピスの味を保ちながら、体脂肪を減らす機能を持たせている。販売量は、発売から3カ月で年間目標の6割を突破。初年度は約200万ケースを販売した。
この新商品が、40代以上の男性から高い支持を得た。この世代は、カルピスから離れてしまっていた層だ。健康を訴求することで、大人にも再び手に取ってもらうきっかけが生まれたのだ。
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