この冬話題の鉄道映画2本! 描かれたのは「地方鉄道」が果たす役割杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2018年12月07日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

きっかけは「列車衝突事故」

 発端はえちぜん鉄道の前身、京福電気鉄道越前本線時代の2000年に起きた列車衝突事故だった。車両の整備不良でブレーキが効かず、対向列車と正面衝突。運転士1人が乗客保護に尽力した後に運転席にとどまり、殉職した。その半年後には運転士が信号を無視して発車、対向列車と正面衝突して乗員乗客24人が重軽傷となった。

 当時、京福電気鉄道越前本線と三国芦原線、永平寺線にはATS(Automatic Train Stop、自動列車停止装置)が整備されていなかった。2度目の事故の後、国土交通省は京福電鉄に対して全線の運行停止を命令、さらに「安全確保に関する事業改善命令」を出した。しかし、以前から赤字だった京福電鉄は安全設備への投資ではなく路線廃止を選択する。

 バスが代行で走ることになったが、それが冬期の積雪時に交通の大混乱を招いた。鉄道を利用していた人がマイカーに移行したことで、普段から混んでいる幹線道路に通勤・通学の送り迎えのクルマがなだれ込み、そこに代行バスも参入して、とうとう道路はまひ状態になった。

 やはり鉄道は必要だった。そこで福井県と沿線市町村、民間企業が出資して第三セクターのえちぜん鉄道が発足。旅客の少ない永平寺線を除く、越前本線(現・勝山永平寺線)と三国芦原線を引き継いだ。

 安全設備、車両の更新などを実施して、03年に運行を再開。このとき、鉄道の本来の在り方を見つめ直し、地域と共生する、利用者に向き合う鉄道となるためにアテンダント制度を始めた。経営は厳しくても、地域のために鉄道を動かす。この判断は、自治体が関与する第三セクターならではの着想とも言える。

photo 定期普通列車のアテンダント乗務は珍しい

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