日本の職能型の処遇システムは「専門性や強み」より、「汎用的な業務遂行能力」が重視される。欧米が“仕事に焦点を当てて個別の職務内容を「ジョブ・ディスクリプション」として記述する”のとは対照的に、日本では“人に焦点を当てて階層別に画一的な「等級定義」や「評価基準」が定められる”。
強みや専門性、役割や使命よりも、汎用性の高さや器用さ、会社都合による異動にいつでも応えるような姿勢が求められる。“個々の力量が問われるプロフェッショナル”ではなく、“主体性や熱意は抑えて、全体を見て空気を読みながら適切な言動を選択する能力が問われるメンバーシップ”が重要なのである。これでは、エンゲージメントの高い状態はなかなか望めない。
エンゲージメントを高めるには、上司のリーダーシップやチームビルディング、職場環境の改善や組織開発、仕事の与え方や福利厚生制度の改定といったアプローチもあり得るだろう。しかし、既に述べたような根本問題を軽視したままでは、効果はかなり限定的なものに終わるに違いない。
時間と賃金のリンクを法の範囲内で(早期の法改正を求めたいが)、部分的にでも切り離すこと。オーバー・コンプライアンス(過剰規制)の見直し。多すぎる部署と役職者が原因となっている、複雑なコミュニケーションの解消。職務型処遇システムの段階的な導入。これらが、エンゲージメント向上のポイントなのである。(川口雅裕)
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