日本の「従業員エンゲージメント」が低い、4つの事情世界レベルで低い(2/4 ページ)

» 2018年12月27日 07時12分 公開
[川口雅裕ITmedia]

 2つ目は、オーバー・コンプライアンスである。社内外で何か起こるたびにルールが作られ、手続きやチェック・監視が増えていく。少しでもリスクがある試みは、排除されるようになる。あれをするな、これをするなと禁止するルールばかり作って守らせようとする企業の姿は、まるで小中学校のようだ。

 ルールを作って監視強化をしたからといって不正や不祥事が減るわけではない、というのは起こり続ける大企業のさまざまな事件を見ればすでに明らかになっている。トップが謝罪の会見で口にするように、不正・不祥事の原因はモラルハザードなのであり、対策は良質な組織風土づくりに尽きる。ところが、依然として過剰な規制をしつづけているのが実際だ。そして、オーバー・コンプライアンスはノー・チャレンジにつながっていく。

 創意工夫や新しい取り組みは前例がないから、常にリスクをはらむのは当然だ。でも、リスクはすべて排除すべきというルールの番人は、それを許さない。やるなら、絶対にうまくいくことを論理的に説明してくれ、となる。やってみなければ分からないなどという物言いは、聞いてもらえない。こうして、多くの挑戦が排除され、挑戦者もだんだんと減っていく。挑戦がないところには、無事はあるが成功はない。成功がなければ、喜びもない。

 オーバー・コンプライアンスは、従業員の挑戦を阻み、成功の喜びを味わわせない組織を作ってしまう。もちろん挑戦には失敗もつきものだが、結果がいずれであっても、挑戦する姿勢は主体的であり、そのプロセスは人を夢中にさせる。旧態依然の業務遂行を無難に進めることばかりが求められる組織で、エンゲージメントが高まるはずはない。

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