日本の「従業員エンゲージメント」が低い、4つの事情世界レベルで低い(3/4 ページ)

» 2018年12月27日 07時12分 公開
[川口雅裕ITmedia]

 3つめは、複雑な組織形態によるストレスの多さである。日本の企業組織は、国の人口構成と同じようにピラミッド型を維持できなくなって、つぼ型になっている。定年退職の年齢が伸び、若年層の採用が少なくなった結果だ。

 それでも、必要なポストに期間を決めて任用するような仕組みなどで、役職者を必要最小限にし続けられれば、ピラミッド型の組織にできるので問題は小さいが、日本の場合、役職がミッションではなく「資格の取得」のようなインセンティブになっていることも多く、役職者に昇進すればずっと役職者でいつづける仕組みの会社がほとんどである。役職者の数に合わせて、部や課が出来たりもする。したがって年齢構成だけでなく、役職や職階の人数構成も、つぼ型になってしまっている。部署や役職者が、必要以上に多い状況なのである。

 部署や役職者の多さは、コミュニケーションを複雑にする。誰に何を、どのようなタイミングで伝えるかを常に、考えなければならない。「これは、○○さんの耳に入れておいて」「○○さんに、相談したほうがいいのではないか」といった会話が多くなり、皆が誰に対して報連相すべきかを考えながら仕事を進める。会議も多いし、関係者同士の人間関係だって気になる。報連相をすればそれぞれのリアクションがあるから、またそれらを調整しなければならない。

 このような複雑なコミュニケーションを心から重要で楽しいと思っているのならいいのだが、実際にはほとんど全員が「大変だ」「面倒くさい」と感じている。多すぎる役職者が原因の複雑なコミュニケーションは、従業員の大いなるストレスとなっており、これがエンゲージメントを低下させる一因となっているのである。

 4つ目は、職能型の処遇が、それぞれの強みや使命をあいまいにし、プロフェッショナルの自覚を低下させていることだ。自分の役割や使命が明確に定められ、自分の強みとともにそれが周知されている環境で、能力を発揮できていれば、エンゲージメントは高まる。これはそもそも、欧米の職務型の処遇システムが目的とするところである。

 誰でもできる仕事だと思うとやる気も湧かないが、私しかできない、私だけに期待されている役割だと思えればやる気は出る。ダメなら次はないという危機感もあるから、必死になって結果を出そうとする。賃金を上げるには、自らの労働の価値を上げることだと考えるから、強みや専門性を磨くための学ぶ姿勢も生まれる。

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