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成功の可能性よりロマンや面白さでチャレンジしたい――ワンファイナンシャル創業者・CEO 山内奏人氏(後編)長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)

» 2019年01月09日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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ワンファイナンシャルのこれから

長谷川: じゃあ、注目している会社はありますか? 「俺があそこのCEOになったら、もっとうまくやったるわ」みたいな。

山内: うーん、僕はプロダクトを作るのは好きなんですけど、会社そのものにはあまりこだわりがないんです。例えば事業ポートフォリオをうまく調整して会社を何百年も続けていく、というようなことには興味がなくて。それよりも、ずっとプロダクトを作り続けたいんです。メッセンジャーとかブラウザとか、人が日常的に使うサービスみたいなものに、すごく興味があります。

長谷川: サービスを作るというところで、今力を入れているのはなんですか?

山内: ここ数年はデータが面白いと思ってます。実は僕らは、レシートだけじゃなくて給与明細のデータとか病院の処方箋のデータとか、いろいろ集めています。FacebookとかGoogleなんかが全く持ってないような情報を頑張って集めてるんですよ。そういうところで何かしらレバレッジを効かせて、彼らと戦えるようなサービスを作れるんじゃないかなと思っていて……。

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長谷川: 集めるデータを選ぶ基準ってなんですか?

山内: 市場に出回る価格とそれを持ってる人の広さを掛け合わせたときに、ある一定以上のボリュームになるということです。例えばレシートはみんなが持っているけど、1枚当たりの価格はめちゃくちゃ低いんですよね。逆に給与明細は、数は少ない代わりに一つ一つは高い。なぜなら、給与明細のデータは人材紹介系に売れるんです。どこの会社に勤めていくらぐらいの収入をもらっているかが分かるので、価値が高いんです。

 こういうことを、セキュリティ的なリスクなんかも含めて社内で綿密に考えてスコアリングして「やる/やらない」の意思決定をしています。

長谷川: 情報銀行みたいなビジネスにつながりますね。

山内: まさに情報銀行ですよ。要はユーザーがうちに情報を預けて、それに対してうちがお金を支払って、うちはその情報をもとに広告なり何なりで得た収益をまたユーザーに還元する、このモデルって信託銀行と同じです。

長谷川: 今、ヤフーさんも「データの会社になる」って言ってますよね。

山内: そうですね。でも、彼らが重視しているのはどちらかというと行動系のデータでGoogleやAppleと同じなんです。僕らは年収がいくらか、みたいな属性系のデータを集めているので、ベクトルが若干違うと思いますね。

長谷川: じゃあ、その延長線上なのか、また違う方向なのか分からないですけど、次はどういう領域で勝負したい、というのはありますか?

山内: 個人的には、僕のスキルセットをもっと社会的なことに使いたいなと思ってます。例えば寄付の文化って面白いなと思って。日本人は諸外国に比べてあまり寄付しないんです。でも、ソフトバンクとかの、チェックボックスにチェックするだけで自動的に引かれていくような仕組みだと、結構やるんですよ。あと、ふるさと納税とかも結構みんなやるわけですけど、あれも一種の寄付だと思うので、それって面白いなと。寄付をもっと簡単に面白く一般化できるサービスがあるんじゃないかなと思って、いろいろ考えたりしてます。

長谷川: 言ってることが、「いっちょあがりのお父ちゃん」みたいな感じだよね(笑)。若い人はなかなか寄付とか言わないから。

山内: そうですかね?

長谷川: うん、やっぱり年齢詐称してると思う(笑)。でも、すごくいいのは、これだけの年の差があってもすごくフラットな感じで、かつ相手の目線に合わせて話をしようとしていますよね。「俺はスーパー高校生だから」みたいな態度でもなく、いい感じの素直さをもって普通に話しているのが、いろんな大人から好かれるポイントの一つなんじゃないですかね。

山内: ありがとうございます。

長谷川: 「情報の非対称性」という、汎用的でレバレッジの効くところに早くたどり着くことができたのも、それがあったからだと思いますよ。今はエンジニアリングを別の人に任せて自分は別の役割をやっているというのも含め、どんどん良い方向に行ってるな、と感じました。

 今日、お話しして感じたのは、素養ももちろん大事だけれど、それにプラスして環境ってすごい重要、ということですね。5年間もいろんなベンチャー創業者と会話したりしているとインプットがどんどん増えて、こういうふうになっていくんだ! みたいな発見がありました。若者がもっとこういう境遇に送り込まれるようになると、日本ももう少し変わっていくかもしれない。山内さんみたいな人が他にもいっぱいいるようになると、いいですよね。今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

山内: はい。よろしくお願いします!

前編を読む)

ワンファイナンシャル CEO 山内奏人氏プロフィール

2001年に東京で生まれる。6歳の時に父親からPCをもらい、10歳から独学でプログラミングを始める。2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年にはウォルト(現ワンファイナンシャル)を創業。


メルカリ CIO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。東急ハンズの執行役員と兼任。AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。2018年10月から現職。


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