ゴーン妻の“人質司法”批判を「ざまあみろ」と笑っていられない理由世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)

» 2019年01月17日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 日産自動車の前会長であるカルロス・ゴーン被告が逮捕されてから2カ月ほどになる。

 長期の勾留が続く中、キャロル夫人が国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)に、9ページにわたる書簡を送ったことが明らかになった。夫人は書簡で、「日本の刑事司法制度がゴーンに課している厳しい扱いと、人権に関わる不平等さを白日の下にさらす」ことをHRWに求めている。

 時を同じくして、HRWアジア局長のブラッド・アダムスは国際情勢サイトのディプロマットに、ゴーンに対する人権侵害について寄稿し、「ゴーンは保釈を却下され、取り調べ中に弁護士を伴うことは許されず、逮捕以降は家族と会うことも許されていない」と主張。さらに、「ゴーンに対する深刻な嫌疑や、彼の日産時代に絡んだ論争があろうとも、刑事告訴に直面している人は誰しも、このような形で権利を奪われるべきではない」と指摘した。

 またキャロル夫人の書簡にはこんな記述もあるという。「毎日何時間も、検察官は弁護士が立ち会わない中で、なんとか自供を引き出すために、彼を取り調べし、脅し、説教し、叱責(しっせき)している」

 夫人は、いわゆる「人質司法」を批判し、まだ有罪になっていないゴーンがあまりに不当に扱われていると言いたいのである。さらに今後、別件の逮捕などによって当局はいつまででも勾留を続けることができ、自供するまで延々と密室での取り調べが続くことになる。

photo 「自白偏重主義」の日本の刑事司法制度は海外からどう見られているのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

 この書簡のニュースを受けて、ネットニュースには早速、否定的なコメントがあふれていた。筆者は決して人権意識の高い運動家ではないし、欧米の価値観を無条件に礼賛するつもりもない。ただゴーンのケースでは、キャロル夫人やHRWの言い分にも一理あるのではないかと感じている。

 今回の事件では、ゴーンの怪しいカネの動きや、日産とルノーのビジネスにおける力関係、国策捜査の指摘などいろいろな情報が飛び交っている。だがそうした話はいったん脇に置いて、日本の刑事司法制度が外国からどう認識されているのかに焦点を当ててみたい。

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