この「広告費換算」というやつが曲者(くせもの)です。本当なんでしょうか?
プロスポーツやイベントが成功すると、「何億円の経済効果がある」という試算も発表されたりします。実際にお客が集まったり、人が移動するような実消費換算は、理論上とはいえある程度意味があるかもしれません。観光客が集まれば消費が起こり、人件費や建築費などさまざまな経済活動につながるのと同じ理屈です。
一方広告費換算というものについて、同様に「ただ目立てばよい」といえるのでしょうか?
極端な例では注目を集める事件を起こした場合でも「目立つ」という点では同じです。大事件はビッグニュースとして次々拡散されて広まります。NHKから民放までが生中継し続けた、昭和の「あさま山荘事件」の90%という視聴率のように、ショッキングであればあるほど注目も集まります。
ZOZO前澤社長の場合、自身のTwitterフォロアー50万人を、500万人を超えるまでに増加させることに成功したという点で、単なる注目以上の成果を上げたとはいえるでしょう。1人100万円という金で釣ってフォロアー増を狙う手法は反発を呼び、キャンペーン終了と同時に数十万単位でのフォロー解除も発生しています。ただこれは当初から当然予見されており、また解除者をはるかに上回る新フォロアーが得られたという点は間違いありません。
経営的に、マーケティング的に重要なことは、こうして目論見通り増えたフォロアー数の価値をどう評価すべきかにあります。つまり結果として話題になった今回の件は、計画段階でその成否は決まっていたのです。この手法に価値がないというのは、前澤氏がプランを表明した段階で判断されるのべきなのです。そこまでの理解を持たない経営者は価値判断する資格がありません。
私は2つの目的があったと感じています。1つはZOZOの顧客となり得る、こうした話題に飛びつく層の獲得です。批判を含めてネットニュースでは話題性こそもっとも価値を持っています。大仰で意味深なタイトルをつけることは、ネットニュースや記事では何より重要とされます。「中身が良い」かどうかの判断は簡単ではありませんが、タイトルとしてクリックを稼げるかどうかはただちに判別可能です。
つまり前澤氏のような経営観をもって、話題作り含めた広い意味での広報活動という戦略的な目的があるのかどうかこそ、評価の本質なのだといえます。単に「ZOZOが成功したからウチも」というような定見のない姿勢が論外なのはいう間でもありません。それはマーケティングの成否ではなく、経営者の判断がズレているのです。
同じく加入者拡大キャンペーンを行ったPayPayも、一番リーチしたかったノンアクティブな、未利用ユーザーを開拓できたのかどうか、単にニュースで話題となった以上の成果こそが評価の分かれ目です。予定を大幅に上回る早期キャンペーン終了は、単なるチェリーピッカー(特売あらし)への便益供与だけで終わってしまったのではという疑念が残ります。
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