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地方の有力スーパーが手を組んだ“1兆円同盟”誕生、イオンとどう戦う?小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)

» 2019年01月23日 06時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

イオン VS. 地域有力スーパー

 2000年代以降、消費の低迷と金融環境の悪化でさまざまなスーパーが経営破たんし、その受け皿として業界再編を進めたのが、イオングループであることはよく知られている。小売最大手のイオングループが各地で、地場食品スーパーのグループ化を進めたことによって、イオン傘下スーパー VS. 地域の有力スーパーという構図に変わってきた。

地域の有力スーパーに立ちはだかるイオン 地域の有力スーパーに立ちはだかるイオン

 下図は、地域ごとのイオングループの売り上げ規模と、地域有力スーパーの売り上げ規模を対比したものである。これを見てもらえれば、今回の「同盟」の対抗軸がイオングループであることは明確だろう。北日本、中部、西日本の地域トップ企業が協調して、覇者イオンに対抗するといういわば「合従策」のようなイメージだ。

イオン VS. 地域有力スーパーの売り上げ状況 イオン VS. 地域有力スーパーの売り上げ状況

 この直接的な背景としては、イオンが2017年12月の中期計画で地域ごとに総合スーパーと食品スーパーを再編し、競争力の強化を図ったことにあるとされる。3社同盟は今後も地方独立系スーパーの参加を募り、業界再編の極となることを目指すという。ただ、図を見れば分かるように、この同盟は地域トップ企業の戦略的結合であり、他のエリアのトップクラス、もしくは、規模は小さくともイオングループと渡り合えるような、尖がったビジネスモデルを持った企業でなければ、仲間に入れてはもらえない。

 この同盟を先導したアークスの横山清社長は、早くから地域スーパーの糾合を唱え、02年に同じ北海道内のスーパーである福原と経営統合したことを機に、再編の受け皿となる持株会社アークスを結成。以降、道内のスーパーを次々に傘下に収めて道内最大シェアを持つグループを築いた。

 11年には青森県八戸市を拠点に北東北で最大のシェアを持っていたユニバースをグループに迎え入れ、その後、岩手県の有力スーパー、ジョイスやベルプラスも傘下入りしたことで、アークスは全国有数の食品スーパーとなった。

 1990年ごろ、売上高400億円台の地場スーパー(当時はラルズ)だったこの会社は、現在では5000億円企業となり、北海道(県内シェア25.8%)、青森(同28.9%)、岩手(同40%)の3県でトップシェアを持つ。経営が悪化して吸収された企業を除き、傘下の企業は事業子会社として存続し、アークスの全体戦略の下、地域ごとに事業を推進する。これをビジネスの世界では「八ヶ岳連峰経営」と称する。八ヶ岳のように、頂上が複数ある経営体を目指すという意味であるという。今回の「同盟」は、こうしたアークス・スタイルの拡大版であり、イオンという「外圧」との対抗を旗印として、生き残りのための同盟を作り上げていくことになる。

八ヶ岳連峰経営(出典:アークス) 八ヶ岳連峰経営(出典:アークス

 今回この同盟に参加したリテールパートナーズも後発ではあるが、アークスと同様に持株会社による統合を山口、九州北部で展開して頭角を顕した企業だ。この主宰企業は丸久というスーパーなのだが、バブル崩壊後には経営破たん寸前の状態に陥りながら、全国有数の高収益スーパーにまで改善したという業界でも稀有な歴史を持っている。あまり知られていないと思うので、そのエピソードをご紹介したい。

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