働き方を変えるということは、「これまでの常識を疑い、変えていくこと」でもある。そのため、社員が互いに疑心暗鬼になっていたり、性悪説に基づいて判断したりしていたのでは、改革はなかなかうまく進まない。
離職率が50%を超えたにもかかわらず、「変化が激しいベンチャーの世界では、価値観が合わずに辞めていくのは仕方がない」と考えていたトークノートの社長は、なぜ考えを変えたのか。どんな方法で離職率0%を達成したのか。
トークノートは、「20人いた事業部のほぼ全員が辞める」という事態に直面した社長が奮起。離職率を改善するために「社員の相互理解の促進と理念の浸透」に向けた施策に取り組み始めた。社員それぞれが、幼少期からの印象に残っている出来事やその時の気持ちなどを「私の履歴書」として書き出し、共有するという取り組みを行ったところ、仕事上のやりとりだけでは分からなかった互いの人となりを理解でき、それが“心理的安全性”につながったという。
腹を割って何でも話すことができ、後腐れなく議論できる――という環境は、改革をする上で欠かせない基盤であり、そのような環境を作れないと改革は難しい。また、トークノートの取り組みは、トップダウンで生まれたカルチャーに合致する人を集めていく「GAFA」的な組織作りとは異なり、現状の組織を是とし、ボトムアップ型で“社員同士の一体感”を醸成するアプローチと言えるだろう。個人的にはこのような取り組みが、“日本企業ならではのグローバルでの勝ち方”につながるのではないか、と考えている。
働き方改革がうまくいかない企業は、いったいどうすればいいのか――。その解の一つが「外の世界を見ること」だと思う。
昨今では、さまざまな企業が働き方改革に関する勉強会を開催しており、自社のノウハウや知見を共有している。こうした場で他社の取り組みを見聞きすると、自分が当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったり、これまでの常識がもはや非常識になっていたりすることに気付ける。外の世界に目を向け、自社の成長に役立つ取り組みをどんどん取り入れている企業は、働き方改革もうまくいっている印象だ。
最後に、働き方改革が定着している企業に共通する最も大きなポイントを1つ。それは「働き方改革を声高に主張していない」こと。あくまで改革は手段にすぎない。「企業として、どうありたいのか」というビジョンを語らずに改革を叫ぶ企業の働き方が変わることはないのだ。
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