「働き方改革」――。この取り組みが国策となって以来、多くの企業がこの言葉に悩まされてきたのではないだろうか。働き方改革に関するアンケートや調査を見ると、さまざまな取り組みを試してはみるものの、社員の賛同を得られず「軌道に乗らない」という担当者の声が後を絶たない。
そんな状況下で、この1年半、働き方改革に関わる取材を続け、さまざまな立場の方々から話を聞いているうちに分かったのは、成功する企業、失敗する企業のそれぞれに共通点があるということだ。本記事では5本の推し記事を通じて、それを紹介したい。
多くの会社で「働き方改革がうまくいかない理由」を端的に示しているのが、この講演記事だ。
掛け声ばかりで誰も踊らない――。ITmedia エンタープライズ編集部が行ったパネルディスカッションで、「そんな働き方改革の失敗は『社員のしらけ』によるもの」という意見が出た。社員をしらけさせず、その気にさせるにはどうすればいいのか。
そもそも、私が働き方改革の取材をしようと思ったのは、ある会社が“早く帰れるようにする施策を何も打つことなく”、社員に「早く帰れ」とうるさく言い続け、社員がむなしい気分にとらわれている――という話を聞いたことがきっかけだった。この手の会社の働き方改革がうまくいったという話は聞いたことがない。なぜなら、「国策だから仕方なく働き方改革をやっている」のがみえみえで、社員のことなど頭にないからだ。
この講演記事では、改革に成功した企業が、「社員をしらけさせずに、その気にさせる方法」を紹介している。重要なのは「働き方の目的を考えることが、改革のスタート地点」だと認識すること。そして、目指すゴールを社員といかに共有できるか、の2点だ。
「強烈な危機感を持っている」ことも、働き方改革がうまくいく企業の共通点だ。この事例のセゾン情報システムズはもとより、企業の文化を変えるほどの大きな改革に成功している企業は、多くが存続の危機にさらされたり、従来の方法論が通用しなくなって破綻したりといった「時代の変化」に直面している。
本来は、変化の兆しが見えたときに手を打てたらいいのだろうが、なかなかそうもいかないのが実情だ。「2025年の崖」から落ちないためには、危機の兆しに敏感になることが重要といえそうだ。
旧態依然とした働き方が“痛みを伴う大きな事件”につながってしまった――。二度と同じ過ちを犯すまいと誓ったセゾン情報システムズの働き方は、どう変わったのか。
元ファーストリテイリングのCIOで、現在、RIZAPのCIOを務める岡田章二氏によれば、ファーストリテイリングの社長を務める柳井正氏は、常に強烈な危機感を持って仕事をしているという。世界規模の会社に成長しても危機感を持ち続けられるかどうかが、熾烈な生存競争に勝ち残っていくための秘訣なのかもしれない。
働き方を変えるためには、業務を極力シンプルにして複雑性を排除していかなければならない。例えば部門ごとに異なるシステムを導入し、その間の情報連携を手動で行うようなことをしていたら、作業は増える一方で、働き方改革など夢物語になってしまう。
そんな事態を防ぐためには、全体を俯瞰した上で組織やシステムの設計を考える必要があるが、多くの企業が“現場のためを思って”という思いやりから発生した“部分最適”に陥っている。一見、それは良いことのように思えるが、業務現場に決定権を渡してしまったシステムの末路は、複雑化とそれに伴う情報の手動連携、手動メンテナンスによる現場の疲弊以外の何ものでもない。
海外展開を視野に入れ、“世界で勝つためのシステム構築“に取り組むことになったクックパッド。海外企業を参考にプロジェクトを進める中、日本企業のシステムとそれを支える組織との間に大きな差があることを認識した同社は、どう動いたのか。また、分散と分断が進み、Excel職人が手作業で情報を連携している状態から、どのようにして統合された一貫性のあるシステムに移行したのか――。怒濤のプロジェクトの全容が対談で明らかに。
そんな散らかった状況をシンプルにするためには、「経営のトップダウンによる改革の推進」が欠かせないことが、この記事から分かる。企業を強くするための大掛かりな改革をやり遂げるには、「常に全体を俯瞰して考えること」「『何のためのシステム統合なのか』を社員に伝え続けること」「変革プロジェクトを個人とチームの成長につなげること」の3つが重要だ。
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