エコカー戦争の局面を変えたプロボックスハイブリッド池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2019年02月04日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 2018年11月19日、トヨタ自動車は商用バンのベストセラー、プロボックス(含むサクシード)をマイナーチェンジした。細かい変更はさまざまあれど、焦点となるのはハイブリッドモデルの追加だ。初のハイブリッドとして登場したプリウスの発売から24年を経て、遂にプロボックスにまでハイブリッドが普及したことになる。

外観的にはどこが変わったのか分からないプロボックスだが、今回はハイブリッド搭載という大変化が起きている 外観的にはどこが変わったのか分からないプロボックスだが、今回はハイブリッド搭載という大変化が起きている

商用車のエコカー化が意味するもの

 トヨタはすでにタクシー専用車「JPN TAXI」のハイブリッド化を完了している。ちなみにこちらの場合燃料はガソリンではなくLPG(液化石油ガス)だ。燃費は驚異的に伸びた。

 サンプル例が1つで申しわけないが、以前都内のタクシー運転手に聞いたところ、旧来のコンフォートは同じLPGで、条件が悪いと6km/L程度、上手に走っても10km/Lはなかなか出なかった。しかし、JPN TAXIでは誰でも普通に10km/Lが出るそうだ。単純計算だと67%の燃費向上だが、コンフォートは25年前の設計だから、そのまま比較するのはフェアとは言えない。もし純粋にハイブリッド化に絞って差分を考えるのであれば、世間一般で言う「ハイブリッドは燃費向上30%程度」という説が現実的な差ではないか。

 とは言え、世間の現実としてはコンフォートからJPN TAXIに代わったのは事実である。実際の燃費は営業区域の環境によっても違うだろうし、一概には言えないが、それでも都内だけで3万台と言われ、かつ年間6万キロも走るタクシーの燃費が6割も7割も向上するのだから環境負荷低減効果はすさまじい。

1.5リッター74PSユニットに61PSのモーターを組み合わせる。バッテリーは小型化されたニッケル水素 1.5リッター74PSユニットに61PSのモーターを組み合わせる。バッテリーは小型化されたニッケル水素

 地方まで普及するには時間がかかるだろうが、日本全国なら24万3000台ほどである。そしてコンフォートはすでに生産が終了しているので、いずれ全てがJPN TAXIに代わる。個人所有車の年間走行距離を1万キロとして、換算すれば146万台分の燃費が6割も7割も上がることになる。トヨタは「エコは普及してこそ意味がある」と長らく言い続けてきたが、それが口先だけではないことが証明された。

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