「なまはげ」居酒屋にお客が殺到! 秋田県内に“存在しない空間”の魅力とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2019年02月05日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

6000万円を調達

 秋田県人の熱い思いが通じた結果、6000万円を調達。そのうちの1000万円を出資し、実店舗を運営する株式会社なまはげ(秋田市)を設立した。

 その際、秋田県出身で日本テレビ系「マネーの虎」にも出演し、知名度の高いエイチワイジャパンの安田久社長(当時)に協力を仰いだ。

 安田氏は飲食一筋のキャリアを積んで独立後、1998年に東京・六本木で監獄レストラン「アルカトラズB.C.」をオープンしたことによって一世を風靡。その後も、01年に東京・渋谷に刑務所付属病院をイメージしたレストラン「アルカトラズE.R.」などオープンした。その奇想天外な発想により、現在のメイドカフェなど、コスプレを伴うエンターテインメントレストランのはしりとなった。

 なまはげという行事は、NHKの年末年始恒例番組「ゆく年くる年」で放映されるなど、秋田県の名物行事として有名だが、実は県内でも男鹿市など男鹿半島のみで行われており、県民でも実際には見たことがない人が大多数である。

 安田氏は男鹿市出身であり、飲食店の経験も豊富。エンターテインメントを得意とし、本物の「なまはげショー」を見せるレストランを共同経営するパートナーとして最適な人物と考えられたのだ。

 そこで、AKITA DININGなまはげを経営するにあたり、安田氏にも同額の1000万円を出資してもらい、04年に資本金2000万円で店をオープンした。銀座店に続き、仙台店は06年にオープンしている。

photo 店内の様子

銀座に郷土料理居酒屋を集結させる

 AKITA DININGなまはげは郷土料理を懐かしい空間で食べる居酒屋の草分けとなった店だ。この店が成功して以来、宮崎地鶏料理の「塚田農場」(エー・ピーカンパニー)、大阪発祥串かつの「串カツ田中」(串カツ田中ホールディングス)、土佐料理の「わらやき屋」(DDホールディングス)、博多屋台料理の「屋台屋 博多劇場」(一家ダイニングプロジェクト)など、現在上場している外食企業の主力業態が続々と誕生している。

 AKITA DININGなまはげの成功に気を良くした安田氏は、エイチワイシステムを新たに設立し、「47都道府県活性化」をテーマとして、銀座に郷土料理居酒屋を集結させることを企図。実際に、鹿児島県、熊本県、北海道、徳島県などの郷土料理店をオープンさせた。銀座のコリドー街にあった徳島県の「阿波おどり」という店は本物のショーを毎日開催。徳島県名産の地鶏「阿波尾鶏」を使った料理などを提供し、連日満席のにぎわいであった。

 しかし、11年3月の東日本大震災の影響で起きた計画停電や、飲酒飲食を自主規制しようという風潮により、東京都心部の盛り場から人影が消えた。銀座など東京都心部に店舗が集中するエイチワイシステムでは、全店舗で来客数がゼロに近い状況が続いて、同年7月に倒産してしまった。

 現在、AKITA DININGなまはげの経営は秋田活性化が全面的に担っている。一方の安田氏は再起し、飲食店開業を目指す人や、飲食店を経営して上場を目指す人のためのセミナー、「外食虎塾」を主宰して後進を育成している。

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