救急車には上司が同乗した。上司は学生時代に大学病院の救急病棟でアルバイトをしていた経験があり、意識がない人間の扱いには慣れていた。そのため、意識を失っていた筆者を車内に運びこむのにはそれほど苦労しなかったそうだ。
上司は救急車の中で、筆者の妻に連絡をとった。筆者がスマートフォンのロックを解除するパスワードをなんとか伝えることができたからだが、意識がずっと不明瞭だった場合、どうなっていただろうか。緊急時の連絡先は会社に申請しているが、花見会場にいた上司はすぐに妻の携帯番号を参照することができなかったので、さらなる対応に追われていたに違いない。
上司が筆者の自宅に連絡した際、妻はちょうど1歳と4歳になる子どもを寝かしつけているところだった。筆者の家庭は妻と子ども2人の4人家族だ。
救急車で病院に搬送されると、家族がかけつけるのが一般的だ。筆者は車を所有していない。タクシーを使うにしても、寝ようとしている幼い子どもを2人抱えて移動するのはとても大変だ。
たまたま、筆者が運び込まれた病院は自宅から車で30分くらいの距離にあったが、通勤時間が片道1時間以上かかるようなところに住んでいたとしたら、上司を一晩中病院に拘束していたかもしれない。
当時、妻は仕事帰りでヘトヘトになっていた。しかも、近所には助けを求められるような親族は住んでいない。親しいパパ友やママ友はいるが、子どもが就寝する時間帯に電話をすることは避けたかったようだ。家族に重大な事故が起きた場合、“東京砂漠”で子育てをすることのもろさが露呈してしまった。
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