吊輪式が導入されたのとほぼ同時期、吊り手の形状にも変化が起きた。
1965年ごろになると、首都圏の鉄道各社は乗客が握りやすい吊り手の開発を進めた。その中で生まれたのがおにぎり型の「TA型」だ。これは、東京メトロの前身である帝都高速度交通営団の「T」と、吊り手製造メーカー「アサヤマ」の「A」から名付けた。1969年から登場したこの吊り手は、人間工学の観点から握りやすさを追求した結果、おにぎり型になったという(参照記事:90年でこんな進化が!!地下鉄の「吊り手」の歴史)。
吊り手の高さもこの時期にほぼ固まった。東京メトロの担当者によると、吊り手は肘を自然に曲げたときに乗客がつかまりやすい高さに設定している。当初、床面高さは1640ミリとしていたが、1965年以降に当時の日本人の男女平均身長を参考に1660ミリとした経緯がある。現在、この1660ミリというのが東京メトロにおける標準の高さとして統一されている。
このように、吊り手の形状や高さは1965年頃にほぼ原型が固まり、現在まで受け継がれている。それなのに、どうして、丸ノ内線の新型車両は吊り手の形状をリコ式風に変えたのだろうか。
担当者によると、丸ノ内線のデザインである丸いイメージと、開業当時の300形のリコ式の吊り手を表現するためだという。また、「機能面において、人間工学の観点から設計されたおむすび型と、現在のリコ式風の吊り手に大きな違いはあるのか?」という質問に対しては、「高さなどは従来のものと同じにしていますので、大きな差はないと考えます」という回答があった。
新型車両に導入されているリコ式風の吊り手は、乗客が握りやすくなるよう、数種類のサンプルを作成してからサイズを決定したという。おにぎり型と機能面でそん色ない吊り手が開発できたのだ。
地下鉄に乗車する際、何げなく握っている吊り手。丸ノ内線の新型車両に乗車する際は、吊り手の進化に思いをはせるのも悪くないかもしれない。
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