ちなみに、「情報戦争を制するものは世界を制する」という旗印のもと、5G(第5世代移動通信システム)時代の通信機器シェアを広げようとしてきた中国は、ファーウェイに1000億ドルともいわれる莫大な補助金などを与えて育ててきた経緯がある。CIA(米中央情報局)の元幹部は筆者の取材に、「ファーウェイが、中国政府、つまり中国共産党と人民解放軍とつながっていないと考えるのはあまりにナイーブである」と語っている。別の元CIA関係者も「共産主義国家が自国の産業界をスパイ工作に使わないのではないかと思っている記者がいるとすれば、その人は記者失格である」とまで、筆者に述べている。
米中貿易交渉では、米国は中国に対して、主に次のようなことを求めている。「対米貿易赤字を縮小」「米国からの輸出品への制限の緩和」「中国市場に進出する外国企業に要求しているテクノロジーの技術移転の中止」などだ。またファーウェイやZTEなど中国通信会社に対しては、中国政府のスパイ工作に手を貸すのはやめるようプレッシャーを与えている。
こうなると、米政府の要求を飲まなければ、ファーウェイは完全に追い詰められ、今後のビジネスもままならなくなるだろう。ここまでくれば、トランプは「ディール」を結ぶまで、引き下がらないかもしれない。
もう1点、この騒動から感じられるのは、Googleも対ファーウェイ、すなわち対中国の措置に協力的であるかのようにすら見えることだ。というのも、Googleにしてみれば、やっと中国に対して「報復」できる時が来た、ということになるからだろう。
どういうことか。事は2010年にさかのぼる。
Googleは同年、人民解放軍につながりのある中国系ハッカーによる激しいサイバー攻撃に見舞われていると公表した。そしてそれを理由に、当時ビジネスをしていた中国市場から撤退する可能性があると発表して大きなニュースになった。このサイバー攻撃は米政府関係者の間では「オーロラ工作」と呼ばれている。
Googleによれば、この攻撃によって同社はハッキング被害にあい、中国に内部システムへ侵入されてしまったという。
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