ファーウェイの次に狙われる? 中国の「監視」を支えるあの企業世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2019年06月06日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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中国のAI関連企業もブラックリストに?

 ハイクビジョンに話を戻すと、同社は今回のブラックリスト入りの話を受けて、米ニューヨーク・タイムズの取材に対して、「18年10月から米政府と協議をしており、人権問題の専門家などを雇っている」とコメントしている。さらに「ハイクビジョンは企業としてサイバーセキュリティを非常に重要視しており、私たちが進出している市場の全ての法と規制を順守している」とも語っている。

 もちろん、この米国側の「ブラックリストに加える」という話も、米中貿易摩擦で「ディール」を狙うトランプ政権からの中国に対する「揺さぶり」の可能性もある。ただ、半導体など米国製部品の取引ができなくなったり、米国市場から追い出されたりするようなことになれば、また中国政府が後押しする企業が窮地に追いやられることになるだろう。一方で、米中貿易摩擦に「監視」「ウイグル」「人権問題」などが絡んでくることで、中国側の協議へのスタンスがさらに熱を帯びたものになっていく可能性もある。

 実は米政府は、ハイクビジョンだけでなく、中国のAI関連企業もブラックリスト化する、という話も浮上している。中国はAI分野でもかなり野心的に研究・開発を続けているからだ。もっとも、米政府は安全保障を理由にファーウェイを排除したのなら、ハイクビジョンやAI関連企業なども排除してしかるべきである。しないならば、政府の方針として矛盾する。

 もう一つ忘れてはいけないのが、ファーウェイの問題だ。今、孟晩舟CFO(最高財務責任者)の処遇でもカナダ政府を巻き込んでせめぎ合いが続いている。次回出廷は9月だが、身柄が米国に引き渡されるのかも注目されており、ハイクビジョンなどへの措置にも影響を及ぼしかねない。

 ひとまずは、G20までにこの話がどう進むのかが注目だ。それまでに何も起きなかったとしても、大阪でトランプと習の話し合いが決裂すれば、米国側からの何らかのアクションが考えられる。

 いずれにしても、米中の貿易摩擦は、まだまださらに深みにはまっていく可能性が残されているということだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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