ファーウェイの次に狙われる? 中国の「監視」を支えるあの企業世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2019年06月06日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ファーウェイとの共通点

 米政府は、ハイクビジョンなどが提供する監視技術が、中国政府のスパイ工作など安全保障に関わる問題をはらんでいることや、人権を無視した徹底的な国内の監視活動、さらに新疆・ウイグル自治区のウイグル族などへの抑圧を助けているとして問題視している。その中でも、やはり中国政府のスパイ工作に使われるという懸念が最も大きい。

 そんなことから、米国のセキュリティ関係企業の中には、ハイクビジョンの製品をすでに禁止しているところもある。

 ハイクビジョンが、ビデオ処理半導体などの米国製部品を使えなくなったら、大打撃になることは間違いない。一方のハイクビジョンは、米国からの禁輸措置も問題ないと強気だが、現実には、同社の利益の6%を占めるといわれる米国市場から締め出されることになれば、痛みがないはずはない。世界各地に監視カメラなどを入れている同社との取引が禁止になれば、世界中で再びファーウェイ並みの混乱が起きるはずだ。

 ちなみに日本では、NECが顔認証技術で高く評価されている。中国企業が米国から排除されることになれば、日本企業にとっては追い風になるだろう。少し余談になるが、こうした日本の技術を盗もうと、中国はこれまでサイバー攻撃を実施している。米国が中国政府や企業などに対して、ハッキングで知的財産を盗んでいると批判しているが、日本も同じような被害にあっているというのが実態である。

photo 米国は、監視技術がスパイ工作に使われることを懸念している(写真提供:ゲッティイメージズ)

 実はこのハイクビジョン、よくよく見ていくと、ファーウェイと妙な共通点が多い。

 ファーウェイ問題では、ファーウェイと並んで、やはり中国の通信機器メーカーの中興通訊(ZTE)が一緒に排除措置の対象になっていた。というのも、通信機器の基地局などの世界シェアは、最近までファーウェイとZTEが合わせて4割を超えていた。

 ハイクビジョンのケースもこれに似ている。米政府がハイクビジョンと合わせて制裁対象にすると見られているのは、同じ中国の監視カメラメーカーの浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)である。ハイクビジョンとダーファの製品で、世界の監視カメラの3分の1を占めている。ただ、ダーファは世界トップクラスのシェアを誇るものの、ビジネス規模はハイクビジョンの6分の1程度。両者の企業規模の差も、ファーウェイとZTEに似ている。

 ちなみに最近、米国では監視につながる技術に対する風当たりが強くなりつつある。特にリベラルな地域では顕著で、つい先日も、カリフォルニア州サンフランシスコ市が、警察の捜査などにおける顔認証技術の使用を禁止にした。プライバシーの侵害など、導入する側の乱用の懸念があるという理由からだ。さらに現在、サンフランシスコ以外でも少なくとも6つの都市で禁止措置が検討されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.