地方銀行が紙の通帳に代わり、スマートフォンアプリを使ったデジタル通帳の導入を進めている。ITリテラシーの高いユーザーにとっては利便性が増す取り組みだが、銀行側にはどんなメリットがあるのだろうか。
「紙の通帳には、印刷費、印紙税、管理コストなど結構なコストが発生している。繰越、紛失、磁気不良の場合には修正事務もある」と、T&Iイノベーションセンターフィンテック事業部の田邊圭一システム担当部長は通帳のコストについて話す。特に通帳には口座あたり年間200円の印紙税がかかり、この負担が銀行のコストを圧迫していた。
T&Iイノベーションセンターは、千葉銀行、第四銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行の地銀6行が、日本アイ・ビー・エムと共同で設立した企業だ。6行が共通利用する銀行APIの開発など、金融サービスの企画開発を行っている。銀行APIとは、インターネットを通じて口座の情報にアクセスできる仕組みのこと。2017年に成立した改正銀行法で努力義務とされ、各行は開発を進めてきた。
千葉銀行や北洋銀行では、このAPIを使い、2月に通帳アプリの提供を始めた。口座残高や入出金明細を24時間照会できるほか、検索機能も持ち、過去10年分の入出金明細も閲覧できる。アプリを利用する場合、従来の紙の通帳は提供しない。
地銀もデビットカードの発行など、キャッシュレス決済を推進しているが、これも通帳のコストに影響を与える。「デビットカードを含めたキャッシュレス化が進むことで、入出金明細が増える。結果として、繰越が増えコストが増えてしまう」(田邊氏)
また利用者側も、デビットカードを使うなら、リアルタイムで残高を確認したいというニーズがある。
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