マネーフォワードなどのPFM(Personal Financial Management)事業者は、個人向け家計簿サービスで培った銀行口座連携機能を用い、通帳アプリを開発し金融機関向けに提供している。しかし千葉銀行では、その形を取らず、自社で設計開発を行った。
「デジタル通帳にして紙通帳を廃止することを前提とすると、PFMなど既存のサービスではなく銀行主体のサービスが必要」だと田邊氏は言う。その理由はなんだったのか?
PFM事業者が口座連携するには、通常利用者がインターネットバンキングを申し込んでいることが前提だ。しかし、千葉銀行の例ではキャッシュカードを持つ利用者全員を対象とした。インターネットバンキングを申し込んでいなくても、独自のIDを発行し、使えるようにしている。また紙の通帳からの切り替えも、オンラインで可能にした。
2つ目の理由は、リアルタイム性だ。PFM事業者は、連携した銀行口座に定期的にアクセスすることで入出金明細などの情報を取得し、アプリ側に反映する。しかし、デビットカード使用時のように出金をリアルタイムで知りたい場合、タイムラグが生じてしまう。自社設計しAPIと接続することで、リアルタイム性を確保した。
3つ目は、インターネットバンキングに関わるコストだ。地銀などのインターネットバンキングシステムは大手SIerに運用を委託している場合が多い。ただし、この委託料が利用量に応じた従量課金になっていると、PFM事業者が口座情報を取得するたびに銀行側にコストが発生してしまう。
こうした背景から、PFM事業者の既存の仕組みを使った通帳アプリではなく、銀行主体で設計開発したアプリの提供に踏み切った。ただし開発はノウハウやUI/UXを評価し、マネーフォワードに依頼したという。
通帳アプリの提供を始めて3カ月少々が経つが、アプリストアでの評価は「意外と好意的」だと田邉氏。千葉銀行では、2万9000件ほどのダウンロードがあり、約1万6000口座が登録された。一方で、同じタイミングで提供を始めた北洋銀行では、紙の通帳と同時に使えないことへの不満の声もあったという。
インターネットバンキングの利用者は30〜40代がメインだが、通帳アプリは20代の利用者が多い。田邊氏は、「若年層は入出金の照会ニーズが高い。若年層との継続的な接点を維持するツールになるかもしれない」と期待を寄せた。
今後は、リアルタイム性を生かした機能として、プッシュ通知などの実装も検討していくという。
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