マネーフォワード子会社のマネーフォワードファイン(東京都港区)は5月8日、オンライン上の金融データに基づいて与信を行い、中小企業に短期融資を行う「Money Forward BizAccel」を開始した。
背景には、中小企業の資金調達手段が限られているという現状がある。マネーフォワードファインの家田明社長は、こう話す。「主要な貸し手の1つだったノンバンクの数が減り、融資残高も減らしている。銀行や信用金庫といった金融機関は、コストの割にリターンが悪いため小口融資に積極的ではない。加えて、金融機関から調達する場合、さまざまな書類や証明書を用意し、複数回の面談が必要になる。申し込んでも融資の結果が分かるまでに相当の時間がかかり、タイムリーに資金調達できないという課題を抱えている」
データを活用することで、こうした中小企業の資金調達ニーズに応えるのが「Money Forward BizAccel」の狙いだ。SMBと呼ばれる1人や複数人で運営している企業がメインターゲットとなる。決算書や登記簿謄本などの紙書類は必要なく、保証人や担保も不要だ。これによりスピーディな貸し出しを可能にする。融資金額は10万円から500万円、融資期間は1カ月から1年程度となる。
マネーフォワードはクラウド上で動作する会計サービスを提供しており、数十万社にのぼる導入企業が融資を利用できる。クラウド会計サービス上の財務データや連携している銀行などの明細データを使って与信を行う。現在のところ、各種データから与信に必要なスコアリングモデルを作成済みだ。
米国や中国では、データを中心に与信を行うこうした仕組みはオルタナティブレンディングと呼ばれ、急拡大している。国内でも同様の事業を進める企業があるが、マネーフォワードがグループとして培ってきた税理士や金融機関とのネットワーク、そして数十万規模の会計サービス顧客がいることが同社の強みだ。
今回実際の融資を実施する中で、貸し倒れ状況などのデータも集めていく。「AIを用いたモデルの開発には、データがまず必要。そのデータを本格的に集めるために、まずはサービスを提供する。データが集まったあと、機械学習によってロジックを作っていく。数年程度でAIを使った融資審査モデルに進めると考えている」(経営企画グループのグループリーダー 梶芳朗氏)
今後は、企業の資金需要を予測して融資を提案したり、既存の金融機関と連携し与信データを提供したりすることを目指す。
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