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「ココカラスギモトキヨシ」は誕生するか? コスモスの“東上作戦”で深まる混迷長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2019年06月11日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

スギと一緒になるココカラのメリット

 ココカラにしてみれば、強くなかった郊外に店舗展開できる可能性が出てくるだけでなく、スギのヘルスケアのノウハウが得られるメリットもある。18年のスギの年商は約4570億円。ココカラと合併すれば約8555億円で、この組み合わせでも業界トップに躍り出る。

 その後、この発表を受けて、6月3日にはココカラとマツキヨの協議継続が発表された。さらに5日には、マツキヨからココカラに「経営統合を含むあらゆる選択肢の検討及び協議を進める方針」を伝達したと発表されている。

 つまり、「もう同棲でなく結婚したい、なんなら重婚でもいい」と読めなくもない。もしかしたら、かつての三菱東京UFJ銀行のように、「ココカラスギモトキヨシ」のような会社が近々誕生しそうな雰囲気が漂ってきた。

戦国時代のように「まさか」はあり得る

 戦国時代にも、越後の上杉謙信の関東侵攻に対抗して、甲斐の武田信玄、相模の北条氏康、駿河の今川義元という普段はライバル同士の大名があり得ないような同盟を結んだケースがあった。ドラッグストア戦国時代でも、首都圏にコスモスが侵攻してきたとなると、どんな結合もあり得る。

 コスモスは現在のところ、九州から東上して、沖縄を除く愛知、岐阜、富山以西の西日本と、東京に店舗を持っている。18年の年商は、約5580億円だ。

 人口が少ない郊外に大型店を出店し、食品を強化。しかも、うどん、そばなど袋に入った生麺を1玉9円や10円で売る激安商法で、売り上げを伸ばしてきた。店舗数は5月末現在で993店である。コスモスの一般食品の売り上げ構成比は55.9%で(19年5月期第3四半期決算)、食品で集客して利益率の高い医薬品でもうけを得る手法で成功してきた。調剤はかつて実験的に取り組んだことはあったが、基本的に手掛けてこなかったのだ。

コスモスの脅威

 ところが、コスモスが東京で出してきた3店はいずれも駅前で、広尾駅店と西葛西店は調剤併設。中野サンモール店は調剤こそないが化粧品を強化しており、免税店であることが強く打ち出されている。前者はココカラ、後者はマツキヨと看板を架け替えても全く違和感のない店だ。つまり、ココカラとマツキヨにしてみれば、ビジネスモデルが違うのですみ分けできると思ってきたコスモスが、自分の庭に入ってきたと受け取ったのではないか。

 この緊急事態に、どう対処するか。経営陣は協議へと駆り立てられたのではないだろうか。調剤薬局は処方箋を書くだけで4割もの粗利益率を誇り、コンビニよりも多い約6万店が全国で営業している。これを取りに行かない手はないと、コスモスがウオーミングアップを始めたのが、広尾駅店を出店した意義だ。インバウンドの売り上げも、無視できないというわけだろう。

 調剤に力を入れているドラッグストアチェーンは、スギ、ココカラの他、ウエルシアなどがある。ここにコスモスが参入してくるとなるとどうなるか。スギにすれば、食品がそこまで強くないウエルシアなら似た会社なのでまだ対抗できるが、スーパーをも駆逐するコスモスはビジネスモデルが異なるので、非常に厄介と思われたかもしれない。

photo ココカラと一緒になるメリットは?

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