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全財産1200円まで落ちぶれた実業家の軌跡――京町家の分散型ホテルビジネスを成功に導いた原動力とは?電気もガスも止められて(2/5 ページ)

» 2019年06月20日 06時00分 公開
[Work Switch]

―― 今、京都で急成長中のトマルバですが、立ち上げまでの経緯を教えていただけますか?

トマルバ 取締役 山田真広(やまだ・まさひろ)さん

山田真広さん(以下、山田) 僕個人の話をさせていただくと、新卒で東京のベンチャー企業に入社して、そこで2〜3年働いていました。そのときに今当社の代表をしている芦野 貴大(あしの・たかひろ)と出会ったのですが、僕が独立を考えていた時に芦野も会社を辞めるという話を聞きました。2人とも独立するなら、2人で新しいことをやろうという話になり、東京で「Yummy」という会社を立ち上げて「渋弁.com」という渋谷限定の宅配弁当のサービスをはじめました。

 初めは順調だったのですが、大手が宅配弁当事業に続々参入してきて……資金面なども含めて「これは勝てないな」と思ったのですが、その予感通り、売り上げもあまり伸びず、事業は明らかに失敗していました。

 その時期は、電気やガスが止まり、芦野と2人合わせて全財産1200円とかって時もありましたね。

渋弁.comのサービスサイト 現在はサービスクローズしている

―― 1200円しかなかったら、会社どころか食事だってできませんよね……?

山田 「渋弁.com」で売っていた弁当の余りがあったので、皮肉にも食べ物だけは困りませんでした(笑)

 そのときは「ここで折れたら負けだ」と意地を張っていましたが、どう考えても普通の状況ではなかったですし、芦野とは毎日けんかしていましたね。けど、芦野とぶつかっていたのも、あくまで「どうすれば成功できるのか」という点においてでした。そんな状況でも何かビジネスの糸口を探そうとして、もがき続けていました。

―― そんな状況にまでなって、なぜ就職などをして安定を取らず、会社経営を続けられたのですか?

山田 どんな形であれ、会社を続ける以外の選択肢が頭の中になかったこともありますけど、安定を取りたかったらそもそも会社なんてやりません。そのときは、どうやったらその状況を解決できるか、ということしか考えていませんでした。

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