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赤字のUber GMやフォードを超える時価総額の根拠は「自動運転」令和時代に稼ぐ企業はここが違う(4/4 ページ)

» 2019年06月17日 12時20分 公開
[hiroITmedia]
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Uberの時価総額を正当化する自動運転への期待

 キーワードは自動運転です。

 Uberの売上原価比率が50%もある理由は、ドライバーへの報酬です。仮に完全自動運転が実現し有人ドライバーが不要になれば、売上原価は激減するでしょう。ドライバーへの報酬の代わりに自動運転システムの運営費用が売上原価に加算されますが、その金額は現在のドライバー報酬に比べれば格段に小さいからです。ドライバーへの報酬は変動費ですが、ITシステムは固定費であり、規模拡大によって単位当たりのコストが下がっていくというメリットもあります。

 仮にUberの原価率が現在の50%から半減して25%になり、SG&A比率が30%になったとしたらPLはこんなイメージになります。

Uberの原価率が現在の50%から半減して25%になり、SG&A比率が30%になったときのPLイメージ

 売上高の22%もの営業損失状態から、営業利益率45%の超高収益企業に変貌しました。営業利益率45%というのはFacebookに匹敵する水準です。

 Uberは自動運転技術によって根本的にPL構造が変わる可能性を秘めており、そこに夢があります。

 すでに売上高は100億ドルを超えています。営業利益率が45%あれば営業利益は45億ドル、税引き後利益でも30億ドルは確保できるでしょう。そうなれば、現在の時価総額700億ドルでのPER(株価収益率倍率)は20倍強となり、成熟企業のCoca-Colaと同水準。今後の売上成長余地を考えれば、非常にリーズナブルな価格に見えます。

Uberが開発を進める自動運転車

 Uberの高い時価総額を正当化できるのは自動運転以外にないというのが、筆者の意見です。もちろんSG&Aを抑えることで利益を捻出することはできそうですが、それだけでは今の高い評価額を正当化することは不可能でしょう。有人ドライバーから自動運転への転換によって、Uberはいずれ高収益企業に変わると期待されます。

 しかし、完全自動運転が実現するのは何年後になるでしょうか。技術だけでなく法律やインフラ、政治といった問題を乗り越えなくてはなりません。それが5年後なのか10年後なのかはたまた30年後なのか、それは分かりません。

筆者:hiro 公認会計士

1987年生まれ。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人を経て、現在上場企業の経理部に勤務。2012年にインデックス投資を始め、現在は米国株投資に傾倒。2016年より投資ブログ「Grow Rich Slowly」を運営。


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