その背景には、「ニッチな市場でオンリーワンを目指す」(月森氏)という狙いがあった。それ以前から、スペースを貸し出すトランクルームのサービスは提供していたが、不動産事業者などの参入が増え、競争が激しくなっていた。そうすると、物件数やコストでの勝負になってしまう。
さらに、月森氏はトランクルームの課題に目を付けた。それは、利用者がトランクルームまで足を運ばないと出し入れができないため、荷物を預けっぱなしで中身が何か分からなくなったり、契約自体を忘れてしまったりするケースが少なくないことだ。そこで、「お客さまの代わりに、持ち物を1点1点管理するサービスを開拓できるのではないか」と考えたという。
このアイデアを社内で提案すると、反対や懸念の声が多く上がった。破損などのトラブルが発生した場合、法人向けサービスであれば弁償することになるが、個人の持ち物だとそれでは済まない。思い入れがあったり、替えが利かなかったりする可能性が高まるからだ。リスクを懸念する声は根強かった。
一方で、当時の寺田倉庫は「拡大路線からの脱却」戦略にかじを切ったところだった。「法人向けビジネスは、お客さまの業績に応じて荷物の量が変わる。自分たちの主導で、強みやノウハウを生かした商品を展開するチャレンジが必要だった。大手と同じことをしていては、変化に対応しきれなくなる」(月森氏)。現在、同社を象徴する事業の一つとなっている、美術品やワインの保管などもその一環だ。最終的には、その方針に背中を押される形で、minikuraのサービス開発をスタートさせた。
サービス開発を始めた当初、社長から「月100円でやろう」という言葉もあったという。料金やサービス内容に「インパクトを与える」設計を目指していた。
しかし、コストを抑えるのは簡単ではない。まずは自社倉庫を使ってサービスのシミュレーションをしてみたが、立地などの影響でコストが膨らんでしまう。郊外の倉庫を求めて、minikuraの取り組みに賛同してくれる会社を探した。その結果、東北の会社が見つかり、そこの倉庫を拠点にすることになった。その後、段ボール箱の仕入れや運送などについてもパートナー企業を探し、一緒にminikuraをつくり込んでいった。
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