近年、音楽の聴き方として日本でも存在感を増してきた、サブスクリプション(定額サービス。サブスク)のサービス。月額1000円前後の定額料金を支払えば、アプリ上で数百万〜数千万曲が聞き放題になるというものだ。
6月にはAppleが、曲や動画の代表的な管理アプリであるiTunesを最新のOSには搭載しないと表明した。新たなOSにはiTunesの持っていた機能を分割して入れる。同社でも、定額視聴サービスであるApple Musicが主流になってきたことが背景にあるとみられる。
ただ、世界的に見ると日本で音楽のサブスクは浸透しきっているとは言い難いようだ。アメリカレコード協会によると、2018年上期の米レコード業界の売り上げの75%をサブスクが占めた。一方、18年の日本レコード協会の売り上げデータから推計すると、日本の音楽市場に占めるサブスクの割合は約11%にとどまる。
また、音楽サブスクは意外なところで波紋を呼んでいる。3月にミュージシャンのピエール瀧氏が麻薬取締法違反で逮捕されたことを受けて、所属バンドである電気グルーヴの曲の出荷・配信を、楽曲の権利を持つ企業が停止した。CDや曲のデータを持っていない人が聞けなくなり、配信停止の撤回を求める署名運動にまで発展した。
膨大な曲数の音楽を安く視聴できるサブスクは、私たちの音楽の聴き方を進化させるのか、それとも思わぬ影を落とすことにはならないのか。LINE MUSICと並ぶ音楽サブスクの主要国内勢であり、現在約5500万曲を配信しているAWA(東京都港区)を率いる小野哲太郎社長に直撃した。
――6月のAppleによる発表は、「あのiTunesが無くなる!?」と衝撃をもたらしました。実際には、曲のデータをダウンロードして聴く機能は維持されるわけでしたが、やはり同社もサブスクによりシフトしていく、ということなのでしょうか。
小野: Appleが、元からApple Musicに気合を入れていたということは分かっていました。「ユーザーとして、音楽を(より)楽しめるのは定額サービスなので、リソースをそちらに寄せる」という判断を(Appleも)したのでしょう。ただ、「1曲を〇〇円で買う」というアラカルトダウンロードというものは無くならないだろうし、Appleもそういうつもりなのだと思います。
――音楽視聴においてサブスクの浸透は世界的な流れです。一方で、日本市場はやはり比率が高いとはまだ言い切れません。日本でサブスクの浸透が遅れている理由をどう見ますか。
小野: これは「音楽を聴くという行動」に関する競争です。まず、違法アプリの存在は大きいと思う。日本では一部のアーティストが定額配信に曲をまだ出しておらず、聴くためにはCDを買わなくてはいけないという点もあります。これも僕らにとっては課題です。
タイミングの問題もあります。(無料で音楽が視聴できる)YouTubeが浸透する前に(音楽サブスクが)あったのか、YouTubeが浸透しきった後にサブスクが出てきたのか、という点も影響していると思います。
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