――話が変わりますが、膨大な楽曲を安く聴けるのがサブスクの強みです。ただ、一般的に視聴者の目にとまるのは、アプリ内でのランキング上位など「人気者」のアーティストになりがちという指摘もあります。かつて、CD店でマイナーなバンドの「掘り出し物」の曲を、店頭で聴いて見つけ出したような、音楽との幅広い出会いをサブスクではどう担保できるのでしょうか。インディーズのアーティストを始めとする音楽文化の維持にも影響すると感じます。
小野: CDよりもサブスクの方が「新しい楽曲に耳を傾ける」というシーンには向いていると思います。お金も(CDを買うより)掛からず、聴いても損はないので、「耳のハードル」は低くなっているはずです。ただ、インディーズのアーティストの間で、サブスク時代になってヒット作がバンバン出ているとはまだ言えないと思いますね。
(サブスクのアプリ上で)人気アーティストが永遠に聞かれ続けること自体が駄目ではありませんが、毎月(定額料金を)払ってもらうためには、「新たな出会い」が必要です。Mr.Childrenだけを聴くのではなく、新しい曲との出会いを僕らが提供したい。そのため、「他のユーザーが(プレイリストを)勧める」という切り口を重視しています。
――ただ、放っておくとどうしても、ユーザーはランキング上位の曲をよく聞く気もします。
小野: 確かにそれはありますが、うちのトップページは「DISCOVERY」(ユーザーが好みそうな他のユーザーのプレイリストを表示するページ)です。一概に、ユーザーみんながチャートだけを気にしているわけではない。僕らのサービスのミソは、プレイリストを公開している人が、「俺はロックに詳しいので」という主張もレコメンドでできる点です。他のサービスは、そこまでそこに主軸を置いていないと思いますね。
――また、映像業界では、NetflixやAmazonなど配信サービス側が既に巨額を投じてコンテンツ制作にも力を入れています。音楽サブスクの企業として同じような考え方はありますか。
小野: もちろん、株主のエイベックス・デジタルやサイバーエージェントと組んでいく話ですが、例えばAbemaTVから「恋ステバンド」というグループがデビューしました。高校生たちがバンドを組んだのですが、AWA独占で配信しました。コンテンツ制作の取り組みにも注力していきたいですね。
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