スーパーの閉店や職場の終業間際に流れるBGMと言えば、よく思い浮かべるのは「蛍の光」だろう。スコットランド民謡が原曲とされる、卒業式でもおなじみの曲だ。哀愁漂うメロディーに、何となく「帰宅しなくては」と気持ちが募る人も多いのではないだろうか。
音楽配信事業を手掛けるUSENは21日、そんな蛍の光に挑む新たな「帰宅促進の曲」を制作、放送を開始したと発表した。東京藝術大学との共同研究を元に、ミュージシャンと協力して作曲した。オフィスで終業時間の直前に流してもらい、従業員が残業せず自然に帰りたくなる気持ちになるよう促すという。
だが、帰宅時間に店や職場で流される曲としては、蛍の光や同じく切ない旋律のドヴォルザーク「家路」が日本では既になじみ深い。USENがわざわざ新たな「帰宅の曲」を打ち出す狙い、そしてそもそも「帰宅したくなるメロディー」とは何なのか。同社に直撃した。
今回のUSENの新曲は、歌のないインストゥルメンタルで作られた計15分の曲だ。1パート5分の三楽章で構成されているのが特徴。第一楽章はピアノの切なくゆったりした旋律で始まるが、第二ではギターが加わってアンサンブル、少しスピードも上がる。
第三楽章はピアノにフルートとチェロが加わってにぎやかなアンサンブル、明るく軽快なワルツで締めくくられる。終始哀愁が込められている蛍の光や家路とはずいぶん違う印象だ。
作曲プロジェクトに携わったUSENのコンテンツプロデュース総括部編成部のグループディレクター、増根徹さんは「これは(職場で働く人の)帰宅したいという気分を醸成し、『促す』ことを狙った音楽」と説明する。
そもそも蛍の光に帰宅の効果があるように聴こえるメカニズムについてUSEN側が有識者に聞いたところ、「曲そのものに心理的効果があるというより、いつも閉店時に流されているので経験的に(聞く人の間に帰宅するという効果が)醸成されたのでは」という見解が出たという。多くの人が何度も聞かされることで、蛍の光と「終業」「帰宅」を連想するようになったとみられる。ちなみにUSENでは30年以上前から蛍の光を放送しており、一説によるとそれとは別にパチンコ店でも昔からCDなどで流されていたという。
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