今やあらゆる日本の職場で叫ばれる「働き方改革」。その大きな目的の1つが残業の削減だ。「karoshi」という言葉が国際的に使われるほど、日本人と残業は切っても切り離せない関係にあるようだ。では、なぜそもそも私たちは残業をしてしまうのか。「会社のせい」「何となく帰れないので……」など、個人の理由はまちまちかもしれない。
日本人の残業はなぜ無くならないのか。2018年12月に発行された『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(光文社新書)では、立教大学で人材開発・組織開発を専門とする中原淳教授がパーソル総合研究所(東京都港区)と組み、2万人超への調査データを分析することで残業のメカニズムや、無くすコツに迫っている。日本人が残業をする真の理由について、著者の中原教授に直撃した。
――本書はパーソル総合研究所と立ち上げた研究プロジェクト「希望の残業学」を元にした講義形式の本です。確かに電通の過労自殺事件など残業は依然として深刻な問題ですが、大々的に扱おうと考えたのはなぜですか。
中原: 悲惨な事件をゼロにすることが重要であることは言うまでもありません。さらに、残業問題には積極的に解決すべき2つの理由があります。1つは今後、日本企業が直面する重要な「経営課題」ということです。
とりわけ今は人手不足の時代で、(採用という)「入り口」を増やすか、離職を防止するか、あるいは生産性を上げるしかない。生産性はAI(人工知能)化や機械化で上がりますが、本質的な解決になるとは思っていません。やはり「入り口」と「出口」だと思います。
特に入り口にリンクしているのが残業問題です。残業があるから女性は「こんな組織で働けない」ということになる。国は外国人労働者を入れようとしていますが、日本は選ばれる国になっていない。長時間労働の問題は「経営課題」なのです。
もう1つの理由として、これは(労働者)みんなの問題でもあるのです。今のビジネスマンに「何歳まで働くか」と聞くと、普通は65歳と答えるでしょう。60歳で仕事を終えられるとは思っていない。国は70歳と言っている。健康寿命である限り働かざるを得ない社会になってきている。仕事人生が長期化しているのです。長時間でなく、長期間働けるようにしないと危険です。
前者は会社、後者は働く人からの視点の話だといえます。両者がガーンとぶつかるのが長時間労働問題。戦後、これを克服しようと国が何回も施策を取ってきましたが、一向に変わらない解決の難しいテーマなのです。
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