コラム
» 2019年07月24日 05時00分 公開

「土用の丑の日」に憂う【前編】:絶滅危惧のウナギーー横行する“密漁・密輸”がもたらす「希望なき未来」 (1/5)

今年も「土用の丑の日」が7月27日にやってくる――。長年にわたってウナギを初めとした資源管理政策を研究してきた気鋭の研究者が、業界の闇に切り込む3回シリーズの前編。

[真田康弘,ITmedia]

 今年も「土用の丑の日」が7月27日にやってくる――。

 昨年、日本はかつてないほど、ウナギ稚魚(シラスウナギ)の不漁に見舞われた。水産庁の調べによると1963年に232トンを記録していたシラスウナギの採捕量は年を追って減少、2017年漁期には15.5トン、18年漁期には8.9トンにまで落ち込んだ。13年に環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定、翌年には国際NGOの世界自然保護連合(IUCN)も絶滅危惧種に指定している。昨年の不漁の問題については、ちょうど一年前にレポートした通りだ(ウナギ業界の「異常」にイオン、岡山のベンチャーが立ち向かう理由)。

 報道の面でも昨年、「うなぎ絶滅キャンペーン」なるツイッターのアカウントが登場、「うなぎを安く食べ尽くそう」という皮肉を込めた呟きに1万人以上のフォロワーがつき、NHKも含め一般メディアが広く報じた 。最近も「(ウナギを)大事にいただきましょう」という環境省公式ツイッターでの投稿が「炎上」、僅か数時間で投稿が削除されるなど、ネット上でも話題に事欠かない。

 ネット上での話題もさることながら、現実世界でも、今年の状況は去年をはるかに凌ぎ、採捕量はわずか3.7トンの過去最悪を更新した。これは1963年の1.6%にすぎない。「クロコ」と呼ばれるシラスウナギが成長して黒色になった幼魚が含まれている可能性がないとされる72年以降で採捕量が最大だった75年の96トンと比較しても、今漁期の採捕量はその3.8%にすぎない。尋常ではない減り方である。

photo 今年も密漁と密輸に支えられた「土用の丑の日」が7月27日にやってくる

 天然ウナギの内水面での漁獲量も3000トン前後を推移していた1960年代に比べ、2018年には68トンにまで落ち込んでいる。最盛期の1961年(3387トン)比でわずか2%である(図1参照)。

 シラスウナギ採捕数の減少は価格にも反映される。水産庁の調べによると、2003年にはキロ当たり16万円であったシラスウナギの取引価格は、今年は219万円にまで上昇した。現在の金取引価格がグラム当たり約5300円であることから、1キロのシラスウナギを持ってゆけば約410グラムもの金が買えることになる。こうした稚魚の高騰は、当然スーパーに並ぶウナギ蒲焼の価格にも反映されることになるだろう。

photo 採捕量と漁獲量が急減している一方、稚魚の取引価格は高騰している(以下、資料は水産庁の資源などから筆者作成)
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