現在ウナギの養殖は天然の稚魚に頼る以外にはなく、われわれが食べるウナギは全て天然のシラスウナギから成長したものだが、完全養殖のための取り組みも進められてきている。02年に独立行政法人水産総合研究センターは、卵からシラスウナギまでの人工飼育に世界で初めて成功、10年には人工の親魚から得た卵をふ化させた「完全養殖」に成功している。
16年には計画的な産卵と年間数千尾のシラスウナギ生産が可能となり、水産総合・研究センターの後継機関である国立研究開発法人水産研究・教育機構は19年6月、人工的にふ化したシラスウナギを使って養殖したウナギの試食会を水産庁で開催している。しかし、現在の技術で生産した場合、シラスウナギは1尾5400円と、コストは天然ものの10倍以上になるのが現状だ(みなと新聞 19年6月25日)。しかも人工のシラスウナギは天然物に比べて生存率や成長率に劣っている。量産化はまだ先のことと言えそうである。
もし量産化が実現できたとしても、それだけではウナギの減少に直接歯止めを掛けられるわけではない。量産化が進み、天然物よりも安いシラスウナギが流通するようになれば、天然シラスウナギの価格は市場競争上、より安くなる可能性がある。安くなると、シラスウナギの採捕者が以前と同じ程度の利益を上げるためには、より多くの天然シラスウナギを獲らなければならなくなる。
したがって持続可能なウナギ利用のためには、人工シラスウナギが量産化された場合であっても、十分に資源を保護できる水準のシラスウナギ採捕・池入れ上限の設定が必要になってくるだろう。
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