格安旅行会社「てるみくらぶ」倒産の裏側に“キックバック依存経営”――多額の粉飾決算、社長らの詐欺あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(1)(3/4 ページ)

» 2019年08月07日 05時00分 公開
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ついに破産、そして明らかになった詐欺行為

 てるみくらぶは、航空チケットを一般消費者に代理販売し、手数料などを差し引いた代金を、国際航空運送協会(以下:IATA)を経由して航空会社に支払っていた。航空券は、旅行業者のIATAへの支払いが完了後、全日本空輸が運営するシステムで発券されるが、支払いが1度でも滞ると発券されない仕組みになっている。

 てるみくらぶのIATAへの支払いは1回につき約2億円〜4億円で、1週間に1度行われていた。しかし17年2月、旅行先のホテルなどの予約手配を行う業者への支払い約5億円が遅延した。

 てるみくらぶは金融機関に緊急融資を要請し、3月15日のIATAへの支払いは決済できたものの、その翌週の支払いの資金調達は間に合わず、ついに臨時休業となった。スポンサーを探し、関係各所からの追加の支援を受けられるよう交渉していたが奏効せず、自己破産の申し立てに至った。

 てるみくらぶの負債額は、関連企業「自由自在」社を含めたグループ全体で約214億円、そのうち、てるみくらぶの一般消費者に対する負債額は約100億円となった。

 旅行客への弁済については、一般社団法人日本旅行業協会(以下:JATA)の弁済業務保証分担金2400万円の5倍にあたる約1億2000万円が保証されている。しかし、負債額約100億円では弁済率約1%で、返金の見込みはほぼないに等しかった。

 弁済の申請を受け付けているJATAによれば、破産から1カ月が経過した時点で、てるみくらぶは約3万2000件、約85億円分の申請がなされている。

 後日、事態はさらに動いた。てるみくらぶY元社長が逮捕されたのだ。

 Y元社長と元役員らは、粉飾した決算書や偽造した請求書を複数の銀行に提示し、5億円もの融資を不当に引き出した疑いをもたれた。またY元社長個人としては、社内に保管してあった1000万円以上の現金を自宅に持ち出したうえ、破産管財人には「57万円しかない」との虚偽説明をしていた。これらの疑いで、Y元社長は逮捕、起訴され、懲役6年の実刑判決を受けた。

 大きな騒動となったてるみ社の破産だったが、これを機に、消費者が想定以上に保護されていないことが表面化。事態を深刻に見た観光庁は、消費者保護や弁済保証、経営ガバナンスなどの在り方を話し合う有識者会議を立ち上げた。

 破産直前に行われていた現金による前払いでの集客などが詐欺にあたるなどして、一部の債権者で「てるみくらぶ被害者の会」も結成されている。

phot 日本旅行業協会はトラブルや苦情の相談に応じている(同協会のWebサイト)

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