金銭的な被害はもちろん、旅行客にとって旅は夢や楽しみ、思い出と同義であり、その機会が失われたことで精神的ダメージが大きいのも旅行業者の破産の特徴だろう。
実際、TwitterなどSNS上には、てるみくらぶで購入したツアーが叶わなかった人たちから、「高校生のころから貯金していたお金が消えた」「老いた両親のパート代と年金をつぎ込んだのに」「両親へのサプライズだった」といった悲痛な声が多数寄せられた。
見方を変えれば、てるみ社の破産は、普段、「倒産」を意識しない一般消費者が、倒産の被害を認識するきっかけとなったともいえる。消費者自身の与信の目利きも大事だが、てるみくらぶ破産で消費者が旅行に及び腰とならないよう、今後、安心してツアーの申込みができるような消費者保護の制度拡充を期待したい。
パッケージツアーをネットで販売し、航空会社からキックバックを得るという、てるみくらぶのビジネスモデルは当初こそ新しく、少しの間はブルーオーシャンを謳歌できた。しかし日本におけるネットの普及度合いに鑑みれば、同業他社も似たような営業スタイルを始めるのは時間の問題と見えたはずだ。
そこで同社が第一に優先させなくてはならなかったのは、競争が激化するなかで、いかに選ばれつづけるかを創意工夫によって模索することだった。コストが利益を圧迫していたのなら、別の手法を考えるべきであり、粉飾決算と詐欺行為に手を染めることは決して許されないのである。
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報提供に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。 主著に『なぜ倒産』(日経BP社)『御社の寿命』(中央公論新社)『あの会社はこうして潰れた』(日経BP社)などがある。
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