平成から令和へと元号が変わり、広告費もネットがテレビをついに追い抜くといわれている2019年――。
令和の時代がネットの時代になることは必至だが、その礎となる、平成のネット史の最重要人物と言っていいのが「ひろゆき」こと西村博之氏だろう。『2ちゃんねる』と『ニコニコ動画』。ネットのテキスト文化と動画文化が盛り上がるきっかけとなった2つのサービスは、ともにひろゆき氏の手によるものだ。
その先見の明を解説するまでもなく、この2つのサービスの名前をあげれば、ひろゆき氏が本質を瞬時に見抜き、卓越した知見によって生き抜いてきたことは自明だろう。現在はフランスと、日本との2拠点生活をおくり、最近では『自分は自分、バカはバカ。 他人に振り回されない一人勝ちメンタル術』(SBクリエイティブ)など、ビジネス書も上梓している。
そのひろゆき氏が、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。インタビューの内容は、前編・中編・後編の3回に分けてお届けする。ひろゆき氏のインタビューは多岐にわたった。“個人と仕事”の話を起点に、フリーランスに向く人、会社員に向く人、学歴、新卒一括採用、働き方改革、オリンピック後の日本、海外進出の必要性……。そのどれもが示唆に富んでいる。
前編となる今回は、ひろゆき氏の考える「天才の定義」や、会社員に向いている人の特徴などを聞いた。インタビューは、平成が終わり、令和になった初日である5月1日に実施されたが、その日にふさわしい、過去を踏まえた上で、未来を的確に見据える内容だ。
――今日はよろしくお願いします。最近、本を連続で出版されていますね。
まぁ、優秀な人は僕のアドバイスなんて必要ないですし、もっといえば、本当の天才は、こういう本は読まないんじゃないですかね(笑)。僕も読むタイプではないですし。本当に何かが好きで成功する人って、周りが何と言おうとやっているんですよね。「好きなものを見極めよう」と思っている時点で、実はもう向いていないんですよ。
――確かに、学校教育の中でも、本当の天才は教えられる前に、勝手にやっている印象です。
ええ、例えば、優秀なプログラマーで、プログラムの資格を持っている人って、僕の周りにはほとんどいないんです。システムエンジニア検定のような試験で出される問題の知識って、Googleで検索すれば5秒で出てくるので、実務上においてはそれを暗記しておく必要は全くないんですよね。
――ひろゆきさん自身も「好きでやっていたら成功した」というタイプなのでしょうか?
僕はもともと働く気もなくて、引きこもりみたいな感じで、好きなことをだらだらと続けてきたんです。僕がやっていたことが、たまたま、お金になりやすいことが多かったので、結果的に成功と言われてしまうだけで。ちょうど僕がやってきたのは、インターネットで広告ビジネスみたいなものがまわり始めた時代で、2ちゃんねるにも広告がまわるようになって、有料会員みたいなものもでき始めていった頃なんですよね。
僕以外にも、好きでサイトを作っていた人はたくさんいたんですけど、彼らの大半は、途中で仕事を始めて忙しくなっていったりしてやめてしまった。僕は暇人だったので、だらだら続けていたら社会が追い付いてきて、結果としてうまくいっただけの話なんです。だから逆に、僕より能力高いプログラマーでも、儲(もう)からなかったから結果論として評価されていない人はたくさんいるんです。
――やはり評価の基準は、儲かったかどうかなんですね。
そうですね、社会で金になるかどうかで、人は評価を変えるので。社会で『天才』と呼ばれるか、『狂気』と呼ばれるかを分けるものって、出された成果物を社会が受け入れたかどうかだと思うんです。フランスには、鉄の球を砂場の上で投げるペタンクというスポーツがあります。
でもペタンクは現代社会でビジネスとして成立していないから、仮にペタンクが世界一うまい日本人、つまり“ペタンク界のイチロー”がいたとしても、食べていけないんですよね。でも、“野球界のイチロー”はもちろん食べていけますよね。それは、野球にビジネス構造があるからなんです。だから、圧倒的な能力があっても、その能力を評価する構造が社会にあるかどうかで、『天才』か『狂気』かっていうのは、変わってきちゃうんですよね。
――成功することだけを基準にするなら、最初に何をするか選ぶのも重要になってくるんですね。
中学生・高校生男子に人気のスポーツってバスケと野球ですけど、日本人でバスケだけで食えている人って多分100人いるかいないかですよね。でも野球で食えている人なら1000人はいる。そういう意味では、野球に早めに動く賢さをもった人のほうが、食えるかどうかでいうと、食っていけますよね。そして、そういう社会のニーズに合わせられる人のほうが、まずは会社員には向いていると思います。
一方で「世間なんて知らない。俺はペタンクをやり続ける」というタイプの中でも、やっているうちに社会のニーズが生まれてうまくいったっていう人もいるとは思いますけど、もちろんそのままうまくいかない人もいますよね。
だから、その社会のニーズに合わせにいけるかどうかって結構重要なんですよ。それは能力値の絶対的な高さとはまた別の話です。仮に村上春樹が、日本語の本を外国にそのまま持っていって「これは俺が書いた素晴らしい本だ」って言ったとしても、「読めねえぞ」で終わっちゃうと思いますし(笑)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング