信用失墜が企業の「死」――親密取引先の破綻で連鎖倒産した“建機レンタル業界の異端児”あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(7)(3/4 ページ)

» 2019年08月16日 05時00分 公開
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前代未聞の不誠実対応で信用失墜

 ビバックが実質的な債務超過に陥り、債権者が押し寄せた際、会社側が取ったのが、「支援検討委員会」という対応だ。

 もともとの顧問弁護士と新たに雇われた弁護士ら6人が、会社側の代理人となったのだが、だからといって債務整理を受任したわけではなく、いわば渉外担当としてY社長の代わりに債権者に応対したにすぎない。こうした手法を取った企業は、いまだかつてないといってもいいほど異例のことだった。

 いわく、「法的整理はしない、今後の方針は未定、債務整理を受任したわけではないが、ゆくゆくはリスケ(返済条件の変更)も検討しなければならないと思われる建設機械などの資産を、半年程度かけて売却し、資金繰りをつけつつ、近々バンクミーティングを開催する……」という。

 顧問弁護士は誠実だったが、会社側およびその他の弁護士の対応は、債権者にも不評だった。今日にも手形不渡りが出るかという状況下、分かるような、分からないような説明しか受けられない日々が続き、周囲のいら立ちは募っていく。情報開示義務のない私企業といえども、この状況で説明責任を果たさなければ取引先が離れていくのは自明の理だ。

 手形決済の動向が注目された1〜3月の間、ビバックの建機やアタッチメント、各種部品のたたき売り、バラ売りはすさまじかった。メーカーに対しては手形ジャンプを要請(手形の支払い期日の延期を求めること)、メーカー側もこれに応じ、依頼返却もあったという(支払金融機関が手形を決済しないまま振出金融機関に返却すること)。

 さらにPROEARTHに対する支払手形は、契約不履行を理由に供託金を積んで2号不渡りにしたという(契約不履行、詐取、紛失、盗難などによる不渡りを2号不渡りという。手形と同額の供託金を出し、手形交換所に異議申し立てをすることで不渡り処分を猶予してもらえる)。不渡りを回避するためなら何でもありだった。

 4月に入ると騒ぎは幾分、沈静化したが、それは同時にビバックに対する関心の低下も意味していた。「生き残ったところで、何をするのか?」――いくつものリース会社から、冷ややかな、まったく同じ言葉が聞かれた。

 ビバックの信用毀損は著しく、ファイナンス&リースを活用したビジネスモデルはもう使えない。レンタルをやめて販売だけなら月商は3分の1、いやそれ以下に落ち込むだろう。待っているのは膨大な債務を、何十年もかけてほそぼそと返済し続けていく日々だ。企業の倒産は、何も法的整理だけではない。信用を失ったときが、企業の死なのだ。

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