信用失墜が企業の「死」――親密取引先の破綻で連鎖倒産した“建機レンタル業界の異端児”あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(7)(2/4 ページ)

» 2019年08月16日 05時00分 公開
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こうして、連鎖倒産は起こった

 多数の建機やダンプを取り揃(そろ)える彼らの存在感は、東北の震災復興を機に飛躍的に高まった。建物の取り壊しや再建のために、こうした重機の需要が急激に伸びたからだ。

 しかし彼らは、前述のように訝しがられる営業スタイルで押し通すほか、他社の顧客を奪い、業界慣行を無視するなど、同業者からひんしゅくを買うことも多かった。堅実を旨とする古くからの業界関係者は距離を置き、異質なものと見なしていたのは確かだ。

 例えば、自社でさばき切れない余剰の在庫はどうするか。ビバックとPROEARTH、その他の親密な取引先との間で相互に転売、相互に融通し合うわけだ。

 リース業そのものも異質だった。PROEARTHの項でも述べた通りだが、まず、ユーザー企業に、総額の2割程度の融資を提示したうえで重機などの購入を持ちかけ、リース会社とリース契約を結ばせる(関連記事トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件)。

 融資された資金があるため、当面は実質的にユーザー企業にはリース料の負担がかからない。そして実質的なリース料がかかり始めるところで契約を解除させ、重機はPROEARTHやビバックが買い取って別のリースや販売に回す。

 このように、モノの裏付けはあったはずだ。だが口約束での取引が多かったうえに、それぞれのグループ会社が取引に参加することもあった。ネットワークに参加する社数が増えれば増えるほどに実態は分からなくなっていく。モノの裏付けがない循環取引であったかどうかはともかく、彼らのやり方は、やはり商道徳的にそうとう危ういものだったといえる。

 結果的に、PROEARTHのほうが少しずつ経営に綻(ほころ)びが見え、銀行などからの信用不安も高まったころに大手得意先が倒産、その煽りで民事再生法適用申請となったことで、ビバックも連鎖倒産するという共倒れが起こった。ビバックの負債総額は子会社と合わせて約195億円に達した。

phot ビバックが入居していた建物

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