コラム
» 2019年08月15日 05時00分 公開

あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(6):トラックレンタル業界の“異端児”が繰り広げた「違法すれすれの錬金術」――見せかけの急成長が招いた倒産事件 (1/5)

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

[帝国データバンク 情報部,ITmedia]

連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」

成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある。どこにでもある普通の企業はなぜ倒産への道をたどったのだろうか。存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事=前兆」にスポットを当て、「企業存続のための教訓」を探る。

第1回:格安旅行会社「てるみくらぶ」倒産の裏側に“キックバック依存経営”――多額の粉飾決算、社長らの詐欺

第2回:晴れの日を曇らせた着物レンタル「はれのひ」元社長の詐欺と粉飾決算――「成人の日に営業停止」の衝撃

第3回:スルガ銀と結託 “情弱”狙った「かぼちゃの馬車」運営会社の「詐欺まがいの手口」

第4回:太陽光ベンチャーを倒産に追い込んだ“制度の壁”――急成長企業の未熟さも足かせに

第5回:「経営陣の交代・奪還劇」が招いた倒産 “反社”関与もささやかれたエステ企業の粉飾決算

第6回:本記事


 1900年に創業した国内最大級の企業情報データを持つ帝国データバンク――。最大手の信用調査会社である同社は、これまで数えきれないほどの企業の破綻劇を、第一線で目撃してきた。

 金融機関やゼネコン、大手企業の破綻劇は、マスコミで大々的に報じられる。実際、2018年に発覚した、スルガ銀行によるシェアハウスの販売、サブリース事業者・スマートデイズへの不正融資問題などは、記憶にとどめている読者も多いだろう。一方、どこにでもある「普通の会社」がいかに潰れていったのかを知る機会はほとんどない。8月6日に発売された『倒産の前兆 (SB新書)』では、こうした普通の会社の栄光と凋落(ちょうらく)のストーリー、そして読者が自身に引き付けて学べる「企業存続のための教訓」を紹介している。

 帝国データバンクは同書でこう述べた。「企業倒産の現場を分析し続けて、分かったことがある。それは、成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には『公式』がある」。

 もちろん、成功事例を知ることは重要だ。しかし、その方法は「ヒント」になりこそすれ、実践したとしても、他社と同様にうまくいくとは限らない。なぜなら、成功とは、決まった「一つの答え」は存在せず、いろいろな条件が複合的に組み合わさったものだからだ。一方で、他社の失敗は再現性の高いものである。なぜなら、経営とは一言で言い表すなら「人・モノ・カネ」の三要素のバランスを保つことであり、このうち一要素でも、何かしらの「綻(ほころ)び」が生じれば、倒産への道をたどることになる。

 そしてそれは、業種・職種を問わずあらゆる会社に普遍的に存在するような、些細(ささい)な出来事から生まれるものなのだ。実際、倒産劇の内幕を見ていくと、「なぜあの時、気付けなかったのか」と思うような、存続と倒産の分岐点になる「些細な出来事」が必ず存在する。同書ではそうした「些細な出来事=前兆」にスポットを当てて、法則性を明らかにしている。

 本連載「あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る」では、『倒産の前兆』未収録の12のケースを取り上げ、「企業存続のための教訓」をお届けする。第6回目は特異な営業手法で次々と顧客を獲得し、急成長したトラックレンタル会社の倒産劇を取り上げたい。

――建設機械・トラック販売 PROEARTH

リーマン・ショックの余波による建設不況下にもかかわらず、ファイナンス&リースを活用した特異な営業手法で次々と顧客を獲得し、急成長。しかし業界内では同社の大躍進に早くから疑いの目が向けられていた。業界内の信用不安、経営不振、そして多額の焦げ付きによって資金繰りが破綻するという、いわば「定石通り」の同社の倒産劇は、どのような教訓を含んでいるのか。

phot パワーショベル・ダンプなどの販売、レンタル会社だったPROEARTHはいかにして倒産したのか?(写真:アイティメディア撮影)

急成長を可能にした「特異な営業手法」とは?

 PROEARTHは、2007年(平成19年)9月に設立されたパワーショベル・ダンプなどの販売、レンタル会社。17年7月期の年売上高は約177億1700万円。設立からわずか10年で、神奈川県下第2位の規模にまで急成長した。

 躍進の理由は、08年のリーマン・ショック後も長く続いた建設不況下、いち早く拡大路線に舵を切った攻めの姿勢にあった。

 2000年代初頭、米国で住宅バブルが盛り上がり、返済能力の低い人でもローンが組める「サブプライム・ローン」などによって、積極的に住宅購入に対する融資が行われた。ところが住宅バブルが崩壊し、大量の焦げ付き金が発生。米国の金融機関は次々と経営難に陥る。なかでも証券会社の全米4位だったリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻が大きなきっかけとなって、世界規模の金融危機が起こった。

 その影響は、「不安視されたドルが売られ、円が買われる」という為替市場の大変動を通じて日本にも及ぶ。円が盛んに買われ、円高が急速に進んだことで、まず国内輸出企業の業績が悪化。それに引きずられるようにして日経平均株価は低迷した。

 こうしてドミノ式に国内企業が煽りを食らったのは建設業界も例外ではない。リーマン・ショック後、国内の企業や個人の不動産投資熱は一気に冷え込み、建設需要が激減したのだ。

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